研究課題/領域番号 |
15K09781
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
高橋 良 杏林大学, 医学部, 講師 (00317091)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アレルギー / 感染症 / 薬疹 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は、マイコプラズマ(MP)感染症患者の急性期・回復期、及びMP感染症の比較対象としてVZVウィルス感染症(水痘)、EBウィルス感染症、パルボウィルスB19感染症等のウィルス疾患の急性期・回復期、そして健常人における制御性T細胞(Treg)の末梢血中における割合の計測、皮膚ホーミングレセプターやケモカインレセプター発現頻度の解析を行った。 健常人と比較してMP感染症の急性期/回復期ではCD4+細胞中のCD25+Foxp3+Tregの頻度に変化はなく、皮膚ホーミングレセプター、ケモカインレセプターの発現頻度、Tregの代表的なマーカーであるCTLA-4等の発現にも変化が見られなかった。 近年Treg細胞をCD45RAとFoxp3の発現強度によって抑制機能を持つCD45RA+Foxp3+natural Treg、CD45RA-Foxp3++induced Treg、そして抑制機能が無いCD45RA-Foxp3+non-suppressive Tregの3種類の分画に分けることが可能になった。MP感染症のTregを精査すると、急性期・回復期では抑制機能を持つnatural/induced Tregが減少し、non-suppressive Tregが増加していることを明らかにした。さらにproinflammatory サイトカインであるIL-17Aを測定したところ、MP感染症の回復期で優位に増加しており、IL-17A+のinduced Treg/ non-suppressive Treg細胞が増加していることを明らかにした。すなわちTregの数の変化ではなく分画の変化がMP感染症の回復期に発生しており、その結果Tregの抑制機能が低下してエフェクターT細胞の活性化を抑えることができなくなり、薬剤等を含むallergy反応が起こりやすくなると推測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MP感染症の回復期でTregの抑制機能がなぜ低下しているのかはこれまで未知であった。Tregの一般的なマーカーには変化が見られなかったが、今回の研究では、CD45RAとFoxp3発現によって区別される分画の変化、そしてIL-17Aを産生するTregの増加が認められた。一般的なウィルス感染症とは異なり、MP感染症の回復期でTregからTh17への変化が発生している事は、allergy反応が起こりやすく根本的な原因であることが推測でき、これは大きな成果だと思われる。なお、本年度では本研究と深く関連する重症薬疹の論文を公表した。これらの状況から、現在の進捗状況は概ね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
TregとTh17は可塑性があることが報告されているが、なぜMP感染症の回復期でTregからTh17へシフトするのかはまったく判っていない。今後は、TregからTh17へ誘導するサイトカインのIL-6を産生する単球系の解析を行う予定である。具体的には、患者末梢血単球分画の変化の調査やマイコプラズマ菌体成分と同等の刺激物質であるPam3Cys(Toll-like 2 レセプターのリガンド)で単球を刺激し、単球からのIL-6産生が急性期/回復期でどのように変化しているのか、さらに患者末梢血単球が実際にTregをTh17にシフトさせるのかを実験的に行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究試薬を新たに購入する必要が無かったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度で必要になる抗体等の高額な薬品及び培養器具の購入費用として使用予定である。
|