研究課題/領域番号 |
15K09784
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中野 信浩 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30420839)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マスト細胞 / 食物アレルギー / 皮膚炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、食物アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎の発症機序をマスト細胞機能の観点から解明していくことを目的としている。平成27年度の研究では、主にマスト細胞機能を調節している未解明の因子についての解析を行った。 抗原刺激されたマスト細胞はTh2サイトカインを産生、放出する。本研究において、マスト細胞表面に発現しているNotch受容体を介したシグナルがこれらのサイトカイン産生量の調節に寄与していることを明らかにし、その分子的な機序を解明した。特に、Notchシグナルはマスト細胞のIL-4産生を顕著に増強させており、アレルギー疾患の増悪や慢性化にこの機序が関与している可能性が示唆された。 また、免疫抑制性サイトカインTGF-βはマスト細胞の活性化に関与するIgE受容体FcεRIやstem cell factor受容体c-Kitの発現量を低下させ、マスト細胞の活性を抑制する。本研究において、転写調節因子ets homologous factor (Ehf) がTGF-βのシグナルを仲介することを示した。Ehfの機能はあまり知られていなかったが、マスト細胞においてTGF-β存在下で発現が誘導され、EhfはFcεRIやc-Kitの構成分子をコードする遺伝子の転写を抑制する転写抑制因子であることが明らかとなった。マスト細胞機能の抑制機序は活性化の機序ほどはわかっていないが、アレルギー疾患の増悪や慢性化の仕組みを解明する上で抑制機序に関する知見は欠かせない。 さらに現在、食物アレルギーマウスモデルを用いて、腸管のマスト細胞分化にNotchシグナルが関与しており、Notchシグナルの阻害が食物アレルギーの諸症状の緩和に有効であることを明らかにする研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Notchシグナルがマスト細胞のTh2サイトカイン産生を増強する機序を明らかにした論文と、TGF-βによるマスト細胞活性化抑制の機序に転写調節因子Ehfが関与していることを報告した論文を学術誌に投稿し、受理されている。また、食物アレルギーマウスモデルを用いた腸管マスト細胞分化の機序の解明と、その制御による食物アレルギー症状の緩和に関する研究は、すでに論文にまとめ投稿中であり、現在査読者から指摘された実験を行っている。以上のことから、マスト細胞の分化、機能発現に関与する因子の解析についてはかなり順調に進展していると判断している。しかしながら、アトピー性皮膚炎様の皮膚症状を呈する食物アレルギーマウスモデルを用いた解析については、動物施設の移転に伴う実験の中断があり、やや進展が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
最優先課題としては、現在投稿中の食物アレルギーマウスモデルを用いた腸管マスト細胞分化の機序の解明と、その制御による食物アレルギー症状の緩和に関する論文の改訂原稿を作製し、再投稿する。 動物施設の移転作業に伴い中断していたアトピー性皮膚炎様の皮膚症状を呈する食物アレルギーマウスモデルを用いた解析を再開し、平成28年度は当初予定していた解析に加え、これまでの研究で明らかとなったマスト細胞の分化・機能発現を調節する因子に関する知見を加味した解析も行う。平成29年度には研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通りに使用したが、節約の結果59,629円の次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該助成金は28年度分として請求する助成金と合わせ、必要な試薬・機器類、実験動物の購入や、論文投稿等の研究成果発表に使用する。
|
備考 |
研究内容の解説(BioMedサーカス.com) http://biomedcircus.com/paper_03_43.html
|