CD40リガンドトランスジェニックマウスを用いたこれまでの解析から、Vk38cは抗Sm/RNP抗体など全身性エリテマトーデスとかかわりのあるVL鎖であると考えられたため、産生する全ての免疫グロブリンのVL鎖がVk38cであるトランスジェニックマウス(Vk38Cマウス)を作成したところ、一部のマウスで皮膚に炎症が起こり、脱毛がおこることが確認された。このことから核内自己抗原に対する自己抗体が膠原病の皮膚病変の発症に関与すると考えられた。 H27年度からH28年度にかけてマウスの数を増やし、conventional環境下とspecific pathogen free(SPF)環境下で飼育し、皮膚病変の観察と病理組織学的検討、血清解析を行った。皮膚病変としてconventional環境下で飼育すると、次第に皮膚の炎症反応が出現するマウスの増加が見られ、病理組織学的にも湿疹反応に近い表皮内での炎症が見られた。その割合はSPF環境下で飼育しているマウスよりconventional環境下で高い傾向がみられた。Conventilal環境下のマウス群では血清中の総IgE量が高い傾向がみられ湿疹反応を起こすマウスに見られたが、炎症を起こさないマウスでも長期に飼育をしておくとIgEが上がってくることが今年度確認された。さらに炎症を起こさないマウスでも、長期に飼育していくと脱毛を起こしてくるマウスが増えてくることも今年度確認された。炎症とも起こる脱毛は病理組織学的にも炎症が強いが、長期に飼育していて起こってくる脱毛部の病理組織像は、炎症は表皮肥厚もなくヒトの円形脱毛症に近い病理組織であることが確認された。VKcマウスの自己抗体が、飼育環境による炎症の有無や脱毛の病理組織学的差異に影響する可能性が示唆された。
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