研究課題/領域番号 |
15K09791
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
藤原 恭子 日本大学, 医学部, 助教 (40595708)
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研究分担者 |
照井 正 日本大学, 医学部, 教授 (30172109)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有棘細胞癌 / マウスモデル / 腫瘍関連遺伝子 |
研究実績の概要 |
本年度は、ヒストン脱メチル化酵素Gasc1 のノックアウトマウス・ヘテロ(Gasc1 KO (+/-)) において野生型と比べて発現が変化していた遺伝子のヒトorthologueにつき、ヒト皮膚有棘細胞癌(SCC)検体における発現レベルおよび配列突然変異の有無を調べた。SCC検体および正常皮膚検体よりRNAを抽出し、RNAの品質に問題がなかったSCC 25 検体および正常皮膚15検体における、候補遺伝子の発現をreal-time PCRにて定量したところ、二つの遺伝子A, Bの発現量がSCC検体において正常部と比較して有意に変化していることを確認した。遺伝子A, Bは、データベース解析の結果、多くの癌種において、その発現量と予後に相関が見られたこと、いずれの遺伝子も腫瘍の発生・進展における役割がほとんど判っていないことから、この二つについて機能解析を行う方針とし、そのために必要な発現ベクターの構築などを行った。これらと並行して、Gasc1 KO (+/-)の解析により選ばれた候補遺伝子について、ヒトSCC組織における配列変異を探索しているが、現時点ではアミノ酸配列変異を伴うnon synonymous 変異は見つかっていない。SCCの発生や悪性化に影響する変異、発生のし易さを決める発癌感受性遺伝子については知見が限られていることから、本研究で絞り込んだ遺伝子A, BはSCCの発生・進展のメカニズムを理解する上でも、また新規治療法を開発する上でも重要な意味を持つ可能性があるため、次年度よりその機能解析を行っていく。さらに、まだ解析の進んでいない候補遺伝子についても、今後引き続き順次SCC検体における配列変異の有無について検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Gasc1 KO(+/-)の解析からスクリーニングした遺伝子のうち、ヒト有棘細胞癌で変異している遺伝子を選ぶという計画であったが、2種類の遺伝子が絞り込め、次年度以降の研究の方向性が決まった。さらにこれらの遺伝子について機能解析を行うための発現ベクターの作製や、その他の予備実験に入っている。以上のことから、研究が概ね順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
培養系において、二種類の候補遺伝子A, Bの機能解析を行い、皮膚有棘細胞癌(SCC)の発生進展における役割を検討する。具体的には、SCC細胞株、不死化ケラチノサイト細胞株における候補遺伝子の発現をsiRNAを用いて抑制し、細胞増殖能、浸潤・遊走能を検討する。更に、候補遺伝子を過剰発現させて同様の実験を行うとともに、足場非依存の増殖能についても検討する。これらの解析から候補遺伝子が細胞の上記形質に影響を与えていることが判った場合は、その分子機序を探るために、これらの遺伝子の発現抑制もしくは過剰発現を行った状態で、各形質に関連する遺伝子の発現や局在を検討し、候補遺伝子の具体的な機能の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の機器使用料の請求が3月に発生するため、機器の使用頻度を予測して予算を残しておいたが、予想よりも少ない回数の実験でデータが得られ、機械の使用回数が少なかったため余剰金が発生し、次年度に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
計画書の通り、培養系における遺伝子の機能解析に用いる試薬や消耗品の購入、機器使用料の支払いに用いる。実験が順調に進行した場合は、動物実験に進むため、マウスや関連試薬、消耗品の購入にも用いる。
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