研究実績の概要 |
日本人の乾癬患者65例を対象に、TNF-alpha阻害薬に反応する群(レスポンダー)とあまり反応しない群(ノン・レスポンダー)に分けて、遺伝子多型解析を行った。レスポンダーは治療1年後の重症度(PASI)スコアが75%以上改善した患者と定義した。欧米で有意な相関が報告された3つの遺伝子多型(TNFA, TNFRSF1B, TNFAIP3)に関して日本人でも解析を行ったところ、全ての遺伝子で有意な相関には至らなかった。欧米では乾癬に対するTNF-alpha阻害薬として、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブの3剤が使われているのに対して、日本では後2剤のみで、エタネルセプトは適用されていない。今回、欧米と日本で結果に違いが出た理由の一つとして、使われている薬剤の違いが考えられた。 また、研究分担者の広田朝光らは、TYRO3遺伝子のeQTLs(expression quantitative trait loci)領域とアレルギー疾患(アトピー、喘息、アレルギー性鼻炎)との相関を解析した。TYRO3遺伝子はアレルギー感作に重要なTh2反応を抑制することが知られている。3つの日本人の集団(計2403人)において、TYRO3遺伝子の8つのeQTLsを解析した。第1および第2集団において、アトピーはコナヒョウニダニ、花粉などを含む14種類の外来抗原のうち少なくとも1つの特異的IgEが陽性の者、第3集団において、アトピーはコナヒョウニダニまたはスギ花粉の特異的IgEが陽性の者と定義された。3つの集団のメタ解析の結果、rs2297377はアトピーと優位な相関が認められた(P=0.00041)。また、rs2297377のリスク対立遺伝子はTYRO3 mRNA発現が有意に低下していた。以上より、TYRO3遺伝子のeQTLs領域はアトピーの疾患感受性遺伝子であることが示された。
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