研究課題
海外研究共同研究者のイタリア高等医科学研究所の L. Zecca博士より供与されたヒトの黒質(SN)および青斑核(LC)より単離されたニューロメラニン (SN)様色素を用いてその構造研究を行った。5%チオグリコール酸および1%フェノール存在下、6M-塩酸で110℃、6時間、天然のSN-NM とLC-NMの加水分解反応を行った。その結果、SN-NMからは遊離型およびタンパク結合型ドーパミン(DA)、ドーパ(DOPA)およびCys-DAが得られた。一方、LC-NMからはDA、Cys-DAおよびDOPAが得られたが、主生成物として構造未知化合物が得られたため、構造研究(1H-NMR、13C-NMR、高分解能質量分析、元素分析)を行ったところ、β-カルボキシメチルチオ-DAであると同定された。この結果は、ノルエピネフリン(NE)がLC-NM中に取り込まれていることを化学的に初めて証明できた結果である (K. Wakamatsu et al., J. Neurochem., 135, 768-776, 2015)。つぎに、NMの前駆体であるドーペ(DOPE)、ドペッグ(DOPEG)、ドパック(DOPAC)およびドーマ(DOMA)が酸化を受けて生成するo-キノン体の代謝経路を化学的に調べた。その結果、これらのカテコール代謝物はプロトン脱離、脱炭酸を経由して、共通の中間体であるキノンメチド互変異性体に変換された後、この不安定なキノンメチドが、安定なアルコール体またはカルボニル化合物に変換されることがわかった(S. Ito et al., Int. J. Mol. Sci., 17, 164, 2016)。
2: おおむね順調に進展している
青斑核にノルエピネフリン(NE)由来のニューロメラニン様色素が含まれていることを初めて証明できた。また、DA、NE、DOPE、DOPAC、DOMAなどのカテコールアミン類が酸化により代謝され、どのような化合物になって、最終的にニューロメラニンに取り込まれるかを化学的に証明できた。つぎは、研究計画通り、DAおよびNEのタンパク結合型カテコールアミン類のagingを調べたい。
共同研究者のイタリア高等医科学研究所のL. Zecca博士のアドバイスをもらって、タンパク結合型カテコールアミン類の加熱による構造変化、およびこれらのメラニン色素の酸素による活性酸素の生成を調べる。その一方で、タンパクに結合したニューロメラニンを恵与してもらい、in vitroで得られた結果とin vivoで得られた結果の比較を行う。本年の9月にイタリア ミラノで行われるヨーロッパ色素細胞学会が終了した後、ミラノのzecca博士の研究室を訪問し、今後の共同研究について議論する。
本年度に国際学会に出張するため、経費の節約を行った。
経費の国際学会への使用と、消耗品費の適切な使用を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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