研究課題
研究実績の概要中脳黒質中に存在するニューロメラニン(NM)はドーパミン(DA)とシステイン(Cys)から生成する黒褐色の色素で、加齢により増加するがパーキンソン病などの神経変性疾患では減少する。黒質NMは10%程度のタンパク成分を含み、カテコールアミンがタンパクとシステイン残基を経由して共有結合することは既に知られている。しかしながら、DAとタンパクとの結合体がその後どのようになるかは知られていなかった。そこでまず、モデル化合物として、ヘプタペプチドであるDPRA(Ac-R-F-A-A-C-A-A-COOH)、タンパクのモデル化合物として、ウシ血清アルブミン(BSA)、β-ラクトグロブリンを使用した。DAとDPRAをチロシナーゼ酸化し、得られた反応混合物を分取HPLCにより分離精製したところ、主生成物(40%)としてDPRA-5-S-DAが得られた。これを1%フェノール、5%チオグリコール酸存在下、6M-HClで水解すると、5-S-cysteinylDAが88%で得られた。同様に、BSA、β-ラクトグロブリンをチロシナーゼ酸化し、続いてHCl水解すると、11-35%の収率で5-S-cysteinylDAが得られた。チロシナーゼ以外に、酸化剤としてFe(NH4)2(SO4)・6H2O、CuSO4をDA-BSA酸化に使用したところ、Cuイオンの方が二倍ほど反応速度が速かった。DA-BSAとDA-β-ラクトグロブリン結合体の反応スペクトルを経時的に調べたところ、1時間後にゆっくりと580nm付近のピークが上昇した。これは、分子内環化反応などの二次反応が起きていることが推察された。DAとβ-ラクトグロブリンとのチロシナーゼ酸化はBSAよりも早く進行し、30分以降のスペクトルはお互い異なっていることがわかったことから、DA-BSA結合体がDA-β-ラクトグロブリン結合体よりもより安定であると予想された。以上の事より、タンパク結合型DAの酸化的構造は、タンパク質によって異なることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
タンパク結合型カテコールアミンが、agingによりpro-oxidant活性を有するかどうかを調べる目的で、まず、様々なペプチドやタンパク類とドーパミンとの酸化結合を調べた。その結果、タンパクの形状の違いによって、DAタンパク結合複合体の運命が異なることが判明した。
DAとタンパク結合型メラニンがpro-oxidant活性を持つかどうかをGSHとの反応から調べたい。過酸化水素量の測定はAmpliflu Redを使用し、568 nmの吸光度を用いて測定する。また同時に、酸化体GSSGが還元体GSHよりも多く生成するかどうかを調べる。この実験により、DA-タンパク結合型メラニンが高いpro-oxidant活性を有していることがわかる。
本園度に米国デンバーにて行われる国際色素細胞会議に出席する予定のためと将来投稿する論文の英文校正料と投稿料に使用するため、経費の節約を行った。
経費の国際学会および論文投稿料への使用と、消耗品等の適切な使用を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 8件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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