研究課題
ヒト中脳黒質に存在するNMの構造とその生化学を調べることは、パーキン病の発症とその病因の解明において重要な問題である。この不溶性の色素の起源や性質を解明する目的で、NMに似た合成化合物を調製することは有用と考えられる。NMはDAが酸化されたDAキノンに脳内のSHタンパクが結合し、引き続く酸化反応によってタンパク結合型メラニンができることが予想されている 。しかしながら、そのタンパク結合型DAの生化学上の性質はわかっていない。申請者はH27~29年度の科研費において、代表的なSH化合物として、BSA、β-ラクトグロブリンを、DAとチロシナーゼ、又はFe2+イオンやCu2+イオンなどの金属イオンと酸化反応させ、生成する水溶性化合物がpro-oxidant活性を有するかどうかを調べた。まず、モデル化合物として、DPRAとDAのチロシナーゼ酸化を行い、3種類のSH基を介して結合するDPRA-DAを合成できた。この化合物は、DPRAのCys残基がDAに結合していることを機器分析で決定した。次に、BSA、β-ラクトグロブリンとDAとの酸化反応を調べたところ、両者に反応性の違いが見られた。このものを塩酸水解すると、主生成物として5-S-システイニル-DAが得られた。この結合体の構造は、引き続きHPLC-MS/MSおよび1H-NMRで詳細に調べられた。続いて、DPRA-DA、BSA-DA、βラクトグロブリン-DAのメラニンがpro-oxidant活性(酸化促進作用)を有するかどうか調べるために、DA-タンパク結合体のメラニンにGSH添加後、GSSG生成量とGSH減少量、および過酸化水素発生量を測定した。その結果、時間経過後、GSHの減少とGSSGの増加が見られ、過酸化水素の発生を確認した。この結果から、いずれのタンパク-DA結合体メラニンにはpro-oxidant活性があることが初めてわかった。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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