研究実績の概要 |
IL-33はIL-1ファミリーに属する炎症性サイトカインで、上皮系細胞の核内に活性型として存在する。研究代表者らは、ハプテンによるなどで刺激で角化細胞がIL-33を細胞外に放出することを示してきた (Imai Y, et al. J Dermatol Sci,2014)。即ち、IL-33は細胞障害性の刺激によって遊離する警報因子“alarmin”と考えられる。ヒトのアトピー性皮膚炎(AD)の表皮(ケラチノサイト)ではIL-33が高発現していることから、ADの皮膚では「警報因子が過剰」な状態と考えられる。そこで、研究代表者らはヒトケラチン14をプロモーターとしてIL-33を表皮で過剰産生する遺伝子改変マウス(IL-33Tg)を樹立した。このマウスではIL-33受容体を発現する2型自然リンパ球 (group 2 innate lymphoid cells; ILC2)が活性化し、IL-5などのTh2サイトカイン産生の増加を伴ってADに酷似する皮膚炎が自然発症していた。そこで、AD 様皮膚炎を自然発症するこの IL-33Tgマウス を ILC2 のない系統であるRORαからの骨髄移植によってILC2を除去したところ、皮膚炎はまったく発症しなかった。さらに、皮膚のTh2サイトカイン、ケモカインのレベルはほぼ正常レベルにまで低下していた。このように、ADの皮膚炎発症におけるILC2の役割を明らかにした。今後は、さらに、ILC2以外にも好塩基球もIL-33受容体を発現していることから、これらの細胞がIL-33Tgの皮膚炎発症に関与する可能性も考えられるため、好塩基球のない遺伝子改変マウスと交配、あるいはこれらの細胞を消去する抗体を投与し、その影響を検討し、また好塩基球とILC2の関連性についても実験・実証を進める予定である。
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