免疫寛容機序とその破綻による自己免疫発症機序の詳細はいまだに解明されていない。このため、本研究では、マウス胸腺における免疫寛容機序と自己免疫発症機序に関して、中枢性免疫寛容に焦点を絞って研究を行うことを目的とした。平成27年度は、中枢性免疫寛容のマスター遺伝子であるAIREを欠損したノックインマウスを用いて、まず、組織特異的抗原(tissue-specific antigen ; TSA)のうち、各種の自己免疫性水庖症の自己抗原である各種皮膚蛋白の胸腺での発現を検討した。すなわち、まず、天疱瘡群の自己抗原である、各種デスモソーム構成蛋白(各種デスモグレイン、デスモコリン、エンボプラキン、ペリプラキン、エピプラキン、プレクチンなど)、類天疱瘡群の自己抗原である各種表皮基底膜部構成蛋白(BP180、BP230、VII型コラーゲン、ラミニン332、ラミニンガンマ1など)の胸腺での発現を、胸腺全組織および胸腺髄質上皮細胞(medullary thymus epithelial cells ; mTEC細胞)のmRNAを用いたマイクロアレーで解析した。その結果、胸腺ではこれらの抗原のほとんどすべてが発現していた。次に、AIRE欠損マウスを用いた検討ではこれらの抗原の発現が減少していることが判明した。これらの結果から、胸腺において、AIREが、TSAの発現に重要な役割を果たしていることが示唆され、さらに、自己免疫発症にも重要な分子であることが示唆された。今後、AIREならびにAIRE関連たんぱくのTSAの発現機序を検討する予定である。
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