研究課題
自己免疫性水疱症の病態解明を目的とする、エクソソーム解析を基にしたアプローチによる免疫寛容破綻機構の研究はこれまで試みられていない。自己免疫性水疱症の分子病態を多数の患者血清で解析できるバイオマーカーとして、例えば、エクソソームに包含され体内血液で末梢を循環するmtDNA が近年注目されており、年齢と共に増え,RA など自己免疫性疾患では数十倍に増加するとされる。自己免疫性水疱患者でのエクソソーム解析をもとにした様々なバイオマーカーの分析により炎症性老化を背景にした免疫寛容破綻の解明の糸口を見出す可能性があり、研究推進の意義があると考えられる。本年度は、自己抗原が既に明らかな天疱瘡群,類天疱瘡群の疾患に加え,自己抗原が未同定あるいは同定されたばかりの自己免疫性水疱症の患者について、久留米大学医学部皮膚科学で渉猟されているデータの中で,発症年齢やCBC,生化学検査,内分泌代謝関連の検査結果,悪性腫瘍の有無など,個々の患者の老化に関連し得る背景因子をどのくらいの症例数で収集できるかについて、その全体像を明らかにするために調査を行った。皮膚症状を中心とした臨床症状,治療と経過,病理組織学的検査,免疫学的な診断の結果や免疫では慢性炎症に関連したバイオマーカーなどの情報を集め統合した病態関連情報データベースを構築するために必要な準備項目について、施設間での研究支援体制や倫理審査に必要と考えられる情報の収集も含めて検討中である。
3: やや遅れている
年度途中の異動で所属機関が変わり、倫理委員会の審査などを初年度に双方の機関において手続き終了し、患者情報のデータベース構築の準備段階を完了することができなかった。また、データベース構築についての共同研究者との情報共有が遅れ、十分な議論を尽くした準備を行うことができなかった。
初年度と次年度の研究計画の推進については、久留米大学医学部皮膚科との協力体制も必要であるが、アウトソーシングの活用や、所属機関の基礎医学分野の研究者との協力も視野に入れて、ある程度の研究計画の変更についても検討していく予定である。
年度途中の異動により、倫理委員会申請が年度内に完了できず次年度に患者血清を用いたエクソソームの抽出と解析を行うことになったため、その実験に必要な研究費を次年度使用予定とした。
平成27年度で予定していた、患者血清からのエクソソーム抽出とバイオマーカーとしてのmtDNA定量については、倫理委員会への申請と施設承認が得られた後に、平成28年度に次年度使用額を用いて行うことになった。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Exp Dermatol
巻: 25 ページ: 369-371
10.1111/exd.12981