研究課題
自己免疫性水疱症の病態解明を目的として、免疫寛容破綻解明に関連するエクソソーム解析を基にしたアプローチを試みた。自己免疫性水疱症患者血清で解析できるバイオマーカーとして、エクソソーム包含mtDNA があり、加齢や自己免疫性疾患では数十倍に増加するため、多数の自己免疫性水疱患者のエクソソーム解析をはじめとした、またmiRNA発現パターン解析などの様々なバイオマーカーの分析が可能になれば、炎症性老化を背景にした免疫寛容破綻の解明につながることが期待され、研究推進の意義があると考えられる。本年度は、自己免疫性水疱症の患者から効率よくエクソソームを抽出するために、エクソソームの回収方法を近年新たに開発された方法を用いて比較検討した。抗CD9,CD63,CD89などのエクソソームマーカーに対する抗体を用いた抗体結合磁気ビーズを用いる方法や、試薬によるエクソソームペレットの遠心分離法、カラム分離法などを用いて解析した。コントロールヒト血清や細胞培養液からエクソソームを抽出後、ELISAによる収量確認やタンパク量、RNAの精製量のエクソソーム回収前後での比較などを行った。その結果、miRNA発現プロファイリング解析や電気泳動によるタンパク質解析等の目的に応じて、抽出したエクソソームを利用するためには、最適化された抽出手段が必要があることが明らかになった。今後、慢性炎症に関連したバイオマーカーなどの情報を集め統合した病態関連情報データベースを構築するために必要とされる具体的な解析内容とその項目の詳細に関して、施設の研究支援体制や倫理審査に関連する情報の収集も含めて検討中である。
3: やや遅れている
患者データベースについて、現所属機関では加齢や各種自己免疫疾患に加えて自己免疫性水疱症の患者受診者数が少なく、解析の前段階としての準備については、予定よりかなり時間を要する状況である。また、所属機関内で解析実験を行う形で研究を進めているが、実験設備等についても、解析用機器の準備などが遅れており、アウトソーシング先との交渉も進めている段階である。
初年度と本年度の研究計画の推進については、久留米大学医学部皮膚科および久留米大学皮膚細胞生物学研究所との協力体制が不可欠であったが、一部推進困難な状況となった。特に、必要としていた人的資源については、研究者の一斉退職や実験室の実質的な閉鎖など当初予期していなかった状況となったため、今後の対応を更に考える必要がある。所属機関内での基本的な実験方法の確認をおこない方法論的な部分の計画の再構築後に、アウトソーシングの活用や、所属機関の基礎医学分野の研究者との協力体制の構築も視野に入れながら、ある程度の研究計画の変更についても検討していく予定である。
所属機関の異動に伴う初年度の研究計画の遅れに加えて、抽出エクソソームを利用したmiRNA発現プロファイリング解析やmtRNA解析を本年度は行う予定としていたが、諸事情により、未だ準備段階にとどまっており、このような各種解析のために用いる予定であった使用額を次年度使用額として繰り越した。
miRNA発現プロファイリング解析をアウトソーシングで行うとともに、mtRNA解析などの実験の試薬費用などを含めた研究費として、次年度使用額を最終年度所要額に充当した形で使用する予定である。
すべて 2016
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Eur J Dermatol
巻: 26 ページ: 155-163
10.1684/ejd.2015.2719.