研究課題/領域番号 |
15K09801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
文東 美紀 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00597221)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レトロトランスポゾン / LINE-1 / 体細胞変異 / 精神疾患 / 死後脳 |
研究実績の概要 |
Long interspersed nuclear element-1 (LINE-1)は、レトロトランスポゾンの一種であり、自らの6kbの塩基配列をゲノム中に増幅・挿入させることができる。LINE-1の新規挿入は神経前駆細胞中で起きていることが報告されており、精神疾患の病因に関わる可能性もある。今年度は、LINE-1が新規に挿入されたゲノム部位を検出するための手法の検討を行った。 Ewingらが2010年に報告したL1Hs-seq法を原法として、健常ヒト血液DNA (31才日本人男性、n=1)を使用して、特に転移活性が高いと言われている、ヒトに特異的なL1Hs配列の3' UTRに特異的なプライマーと、隣接したゲノム領域にアニールさせるための8種類のdegenerateプライマーを組み合わせたPCRを行い、L1Hs の3’UTRとその3’側に隣接したゲノム領域を増幅させた。その際、使用するDNA polymerase等の方法の改変を行った。この産物を次世代シーケンサー(Illumina社, MiSeq)で解析することにより、L1Hsの挿入部位を網羅的に1塩基レベルで解析を行った。再現性などを確認するために、3回独立に実験を行った。 今回の手法で検出されるべき、ヒトゲノムリファレンス配列上のL1Hsは813ヶ所存在するが、L1Hs-seq原法の感度は平均78.4%であるのに対し、今回の改変法では96.3-97.4%の感度でL1Hsを検出することができ、改善が認められた。また非リファレンスL1Hsを82-142個、そのうちこれまでに報告されていない新規のL1Hs挿入箇所を31-88個、検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた、ヒト血液DNAを使用したLINE-1挿入部位検出法の改善を行い、良好な結果を得ることができているため。
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今後の研究の推進方策 |
今回確立した方法を使用して、まず健常者ヒト死後脳由来DNAを用いたLINE-1の挿入部位の決定を行う。死後脳においてもこの系が良好に働くことを確認した後、精神疾患患者死後脳を用いた実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が予測よりも順調に進み、使用する消耗品が見積もりより少なくすんだため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の実験消耗品費に上乗せして使用する予定である。
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