①幼少期ストレスが神経幹細胞においてDNAメチル化を増やし、その背景にはDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)の発現量増加が存在しているという、申請者の過去の研究結果に基づき、幼少期ストレスにより増加するストレスホルミン・グルココルチコイドがDNMTの発現を増加させる分子メカニズムについて検討を行った。その結果、miRNAの成熟に関与する複数の分子がグルココルチコイドによるDNMT増加に関与していることを見出した。現在、その詳細なメカニズム(どのmiRNAが関与しているかなど)について検討を行っているところである。 ②ゲノム網羅的なDNAメチル化解析により同定した、幼少期ストレスによってDNAメチル化が著しく増加する遺伝子部位XのDNAメチル化が実際に幼少期ストレスにより増加することを別の手法によって確認した。更に、行動実験とDNAメチル化解析を同時に行うことにより、ストレス感受性と遺伝子部位XのDNAメチル化の程度が相関することを見出した。次のステップとして、遺伝子部位XのDNAメチル化をCRISPR/Casにより選択的に操作することにより、幼少期ストレスによるストレス感受性と遺伝子部位XのDNAメチル化の間の因果関係を詰めていく予定である。 ③ヒトにおいて遺伝子XのDNAメチル化の程度と幼少期ストレスのスコアに相関が認められるかどうかを検討しているが、症例数が十分でなく、まだ結論は得られていない。今後、更に症例を増やすことにより、検討を行っていく予定である。
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