研究課題/領域番号 |
15K09807
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内田 周作 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (10403669)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / うつ病 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
近年の高ストレス社会を背景に、うつ病などの精神疾患患者数が急増している。うつ病の発症には遺伝的要因のみならず環境的要因(ストレス)が大きく作用することが推測されている。すなわち、うつ病患者はストレスに脆弱な生物学的素因を有し、外的ストレスに対して適応することができずにうつ状態に陥るといった“ストレス脆弱性仮説”が支持されている。しかしながら、いつ・どこで・どのようなメカニズムによってストレス脆弱性が形成されるかについては全く不明である。最近、うつ病などの精神疾患の病態に対して、成体海馬における神経新生の役割が注目されている。慢性ストレスを負荷したマウスは海馬神経新生の低下を認め、逆に抗うつ薬投与によって神経新生が増加することが知られている。しかし、申請者らのこれまでの解析から、ストレス脆弱性の臨界期は脳発達期にあると推測するものの、海馬神経新生と行動制御・細胞機能との関連研究は専ら成獣動物を用いており、脳発達段階における海馬神経新生とストレス脆弱性との関連は不明である。本研究では、申請者らの先行研究結果から、“脳発達段階における神経新生を介した神経機能障害がストレス脆弱性の形成に深く関与している”との仮説を立てた。平成27年度は、マウス発達段階における神経新生が成体期のストレス脆弱性を調節しているかを検討した。その成果として以下の新たな結果が得られた。 1.ストレス脆弱性マウスはストレス耐性を有するマウスに比して幼若期の海馬歯状回における神経新生が有意に低下していた。 2.幼若期のストレス脆弱性マウスにメマンチンを投与して神経新生を増加させたところ、成獣期にストレス耐性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目的は以下の3つであった。 1.ストレス脆弱性マウスとストレス耐性マウスにおける海馬神経新生の違いを明らかにする。 2.幼若期のストレス脆弱性マウスの神経新生を増加させた場合のストレス反応性の検討。 3.幼若期のストレス耐性マウスの神経新生を低下させた場合のストレス反応性の検討。 1と2については当初の計画通りに進んだものの、3の実験についてはマウスの体重減少等の問題から結果を得るまでに至らなかった。しかし薬剤の濃度を調整することで体重減少の問題は解決できたため、平成28年度には結果が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、幼若期のストレス耐性マウスの神経新生を低下させた場合のストレス反応性の検討に加えて、スタスミンを介した海馬神経新生の制御がストレス脆弱性の形成に関与していることを証明する。この目的達成のために以下の解析を行う。 1.スタスミンを過剰発現するウイルスベクターを3週齢のマウス歯状回特異的に投与し、成体期におけるストレス脆弱性を検討する。 2.スタスミンは微小管活性を負に制御する。そこで微小管活性促進剤でありFDA承認薬でもあるpaclitaxelをストレス脆弱性マウスの脳内に直接投与し、海馬神経新生ならびにストレス脆弱性への効果を解析する。
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