研究課題/領域番号 |
15K09808
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
伊賀 淳一 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70363140)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | うつ病 / セロトニントランスポーター / プロモーター / 遺伝子メチル化 / 遺伝子発現 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
うつ病患者の白血球におけるセロトニントランスポーターの遺伝子多型、遺伝子発現、遺伝子メチル化の関係性を詳細に検討した。遺伝子多型についてはプロモーター領域にあり、うつ病の病態との関連を繰り返し報告されている5HTTLPRをPCR法を用いて確認した。遺伝子発現はTaqman probeを用いたreal-time PCR法で測定した。遺伝子メチル化は研究実施計画に基づき、これまでに発現に影響を与えることが報告されており先行研究も多い部位を選択しpyrosequencerを用いて解析した。未服薬のうつ病患者28名と性年齢の一致した健常対照29名を解析した。初回エピソード22名、反復エピソード6名であった。うつ病患者の白血球におけるセロトニントランスポーターの遺伝子発現は健常対照と比較して有意に上昇しており、抗うつ薬治療後には健常者よりも減少していた。治療前のプロモーター領域のメチル化率は健常対照よりも上昇していた。5HTTLPRは患者においてのみメチル化率に影響していたが、発現には影響していなかった。うつ病の臨床症状の重症度とメチル化率には相関がみられた。以上の内容をHum Psychopharmacol Clin Exp 2016;31:93-199に報告した。また5HTTLPRが日本人におけるうつ病の発症年齢に関連している可能性についてもJ Affect Disord. 2015 Sep 1;183:156-8にも報告した。幼少期ストレスとセロトニントランスポーターの遺伝子発現、遺伝子メチル化との関連についてはまだ解析できるほどデーターが集まっていないが、これから症例数を増やしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ病患者の白血球におけるセロトニントランスポーターの遺伝子多型、遺伝子発現、遺伝子メチル化の関係について詳細を国際誌に報告することができたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。今後は幼少期ストレスの評価ができているサンプルを解析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
幼少期の逆境に関するデータを集めるのと同時に、セロトニントランスポーターの遺伝子発現やメチル化がアルツハイマー型認知症や双極性障害などうつ病以外の疾患との関連を解析し、鑑別に役立つマーカーとしてなりえるかどうか研究する予定である。
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