研究課題
[背景、目的]DNAメチル化はエピジェネティクス機構の1つで、哺乳類のほとんどのDNAメチル化はシトシン塩基(C)とグアニン塩基(G)の順に並んだCpG配列上のシトシンで起こる。動物実験では、幼少期のストレスなどの環境要因が特定の遺伝子のDNAメチル化に影響を与え、遺伝子発現や行動を変えることが報告されている。本研究では、うつ病患者において、幼少期のストレスがDNAメチル化に関与するかどうか、自殺企図の有無でDNAメチル化に違いがあるかどうか、の検討を行った。[方法]うつ病患者56名について、採血後にゲノミックDNAを抽出し、バイサルファイト処理し、イルミナ社製のInfiniumu Huma Methylation450 Beadchipを用いてゲノムワイドにメチル化レベルを測定し(485764 CpGサイト)、Home Environment Questionnaire(HEQ)で評価した幼少期の環境ストレスの程度との関連を、メチル化率を従属変数、年齢、性別、Hamilton Depressive Rating Scale (HAM-D)スコア、HEQスコアを独立変数として、回帰分析で調べた。自殺とのメチル化との関連では、うつ病の患者28名の白血球から抽出したゲノミックDNAを使用し、バイサルファイト処理を行った後、QiagenのPyroMarkQ24でセロトニントランスポーター遺伝子のプロモータ領域の9 CpGサイトのメチル化レベルを測定し、自殺企図有り群と無し群を比較した。[結果]解析対象とした366216サイトの内、22 のサイトにおいてメチル化レベルとHEQスコアの間に有意な関連を認めた。うつ病患者の自殺企図有り群と無し群での比較では、測定した9のサイトの内、2つのサイトにおいて2群間に有意なメチル化レベルの違いを認めた。
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