研究課題
研究目的:過去の報告からオリゴデンドロサイトの機能低下が統合失調症の病態形成に関与する可能性が想定されている。一方、申請者等の解析により、核内受容体遺伝子がオリゴデンドロサイト関連遺伝子の上流因子の一つとなる可能性、および核内受容体遺伝子の機能不全が統合失調症の発症リスクにつながる可能性、が指摘されている。これらの背景を踏まえ、本研究では、「核内受容体の機能低下を介したオリゴデンドロサイトの発達阻害が、結果として統合失調症発症リスクにつながる可能性」に着目して解析を行った。平成29年度の研究実績:核内受容体の機能低下と統合失調症発症脆弱性との因果関係をマウス個体レベルで明らかにするため、CRISPR-Cas9n法によりPpara 全身性ノックアウトマウスを作製し、精神疾患関連行動解析を行った。その結果、統合失調症の中間表現型の一つとして知られるプレパルス抑制の低下、不安関連の行動評価に用いられるMarble-burying testでビー玉埋め隠し行動の亢進、が認められた。これらの結果から、マウス個体レベルで統合失調症発症リスクとPparaの関連が示唆された。今後、これらのマウスの脳を用いて遺伝子発現解析を行い、オリゴデンドロサイト関連遺伝子の発現変動の有無を検証する予定である。また、現在、オリゴデンドロサイト前駆細胞特異的なPpara 全身性ノックアウトマウスを作製中で、今後このマウスを用いた行動解析および遺伝子発現解析も行う予定である。意義・重要性:本研究により、核内受容体/オリゴデンドロサイトのパスウェイが統合失調症の病態生理と関連する可能性、が示された。この結果は、核内受容体を中心とした全く新しい統合失調症病態メカニズムの検討につながるため、統合失調症研究を大きく進展させる可能性がある。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件)
Scientific Reports.
巻: 8 ページ: 2158
doi: 10.1038/s41598-018-20538-3.
Translational Psychiatry.
巻: 7 ページ: e1229
doi: 10.1038/tp.2017.182.
Nature Communications.
巻: 8 ページ: 15800
doi: 10.1038/ncomms15800.