研究実績の概要 |
オートファジーautophagy、エンドサイトーシスendocytosisは細胞内膜輸送membrane traffickingを担当している。ライソソームへ機能蛋白を引渡し陳旧蛋白を解体したり、エンドサイトーシスでは再び必要部位へと機能蛋白を最配置する機能が細胞内膜輸送である。この細胞内膜輸送機構が精神科治療、精神疾患とどのような関連を持つのかを、意欲的に解析しようというのが本研究である。一年の研究期間が終了したが、一つの研究成果が学術誌に受理されている。Enomoto S, Shimizu K, Nibuya M*, Toda H, Yoshino A, Suzuki E, Kondo T, Fukuda H. Increased Expression of Endocytosis-Related Proteins in Rat Hippocampus Following 10-Day Electroconvulsive Seizure Treatment. Neurosci Lett. 2016, in press (*corresponding author)。まず注目したのは、膜内の信号伝達の要である脂質ラフトlipid raftを裏打ちするscafolding proteinsであるカベオリン、フロチリンや、これ以外でエンドサイトーシス部位を裏打ちするクラスリン、さらに各種エンドソーム膜上に発現されるGTPase蛋白であるRab蛋白各種の、電気けいれん療法electroconvulsive seizure後の発現変化である。カベオリン、フロチリンに関してはショ糖勾配を用いた超遠心法によって脂質膜分画を単離してその部位の発現変化をも観察した。いずれの蛋白も、10日間の抗うつ効果を有する電気痙攣刺激によって、ラット脳内海馬領域hippocampal regionsでの発現が亢進することを見出した。従来抗うつ効果と膜上受容体発現の低下が報告されていたが、この現象をふくめて、今回発見した膜輸送の機能亢進が関連している可能性がある。これ以外にもストレス負荷、うつ病発症時に細胞内になんらかの蛋白負荷がかかっている可能性があり、これを膜輸送の機能亢進によって解決している可能性があるのではないかとの仮説のもと研究作業を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の一年目の段階で、下記論文が受理されている。1)Enomoto S, Shimizu K, Nibuya M*, Toda H, Yoshino A, Suzuki E, Kondo T, Fukuda H. Increased Expression of Endocytosis-Related Proteins in Rat Hippocampus Following 10-Day Electroconvulsive Seizure Treatment. Neurosci Lett. 2016, in press (*corresponding author)2)Tamura R, Ohta H, Satoh Y, Nonoyama S, Nishida Y, Nibuya M. Neuroprotective effects of adenosine deaminase in the striatum. J Cereb Blood Flow Metab. 2016 Apr;36(4):709-20. 3)Tamura A, Matsunobu T, Mizutari K, Niwa K, Kurioka T, Kawauchi S, Satoh S, Hiroi S, Satoh Y, Nibuya M, Tamura R, Shiotani A. Low-level laser therapy for prevention of noise-induced hearing loss in rats. Neurosci Lett. 2015 May 19;595:81-6.配布された研究費を用いて蛋白発現解析を精力的に行なっており、成果につながっている。まず注目したのは、膜内の信号伝達の要である脂質ラフトlipid raftを裏打ちするscafolding proteinsであるカベオリン、フロチリンや、これ以外でエンドサイトーシス部位を裏打ちするクラスリン、さらに各種エンドソーム膜上に発現されるGTPase蛋白であるRab蛋白各種の、電気けいれん療法electroconvulsive seizure後の発現変化である。カベオリン、フロチリンに関してはショ糖勾配を用いた超遠心法によって脂質膜分画を単離してその部位の発現変化をも観察した。いずれの蛋白も、10日間の抗うつ効果を有する電気痙攣刺激によって、ラット脳内海馬領域hippocampal regionsでの発現が亢進することを見出した。研究機関は2年残されており、さらに抗うつ薬投与、ストレス負荷によって細胞内膜輸送がいかに変化するかを追ってゆく予定である。
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