研究課題
エンドサイトーシスによって、膜部位から細胞内へと移動する機能蛋白は大きく分けて2つの経路をとる。オートファジー経路を介してライソゾームと融合して解体再利用されるか、リサイクリングエンドソームを介して必要膜部位に再配置されるかである。中枢神経系神経細胞においては、いずれの場合も環境刺激に応じて神経細胞が柔軟に対応する神経可塑性機構を構成しうるメカニズムである。この神経可塑性が結果的に行動学的レジリエンス、ストレス耐性を生むと当研究グループは考え、海馬領域に焦点を当てて研究を施行している。現時点の認識では、背側海馬領域は情報処理に関与しており、腹側海馬領域はストレス処理、感情機構に関与しているとされている。エンドサイトーシス機構、オートファジー機構が強い抗うつ作用を有する、電気痙攣刺激によって機能亢進している可能性を、本年度期間中に示し、海外雑誌へと投稿し受理、出版されている。さらに電気痙攣刺激により、具体的に膜状の発言変動が起きている機能蛋白の検索にはいり、候補として各種神経伝達物質受容体、神経栄養因子受容体の発現をウエスタンブロット等にて施行を開始している。電気痙攣刺激とは、難治性のうつ病で臨床的に使用される修正型電気けいれん療法の動物モデルである。ストレスレジリエンス(ストレス耐性)の形成には脳内構造変化を伴うとするのが、当研究グループの主張であることから、相応の結果が得られていると判断している。
2: おおむね順調に進展している
研究は絶え間なく進行しており、順調である。なにより英文雑誌に投稿し適宜修正後受理されたことが順調な研究進行を裏付けている。期間的にはさらに一年あるため、さらにエンドサイトーシスによって細胞内へと移動してる蛋白の追求が可能となっている。
さらに電気けいれん療法、抗うつ薬投与によるエンドサイトーシス、オートファジー機構の動向を調査してゆく。この際、これら機構の対象となる機能蛋白に関しても調査の対象を広げる予定である。ウエスタンブロット手法のみならず、脳試料からの膜分画、その中でももっとも可塑性に富み信号伝達系の機能蛋白を多く有する脂質ラフト部位の抽出、微細領域を観察できる電顕的手法の導入を検討中である。
来年度の消耗品の使用量の増大が予測されたため、次年度使用分として若干を準備した。
すべて抗体等の消耗試薬品として使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件)
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