研究課題/領域番号 |
15K09817
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
肥田 昌子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 室長 (20333354)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 睡眠障害 / 概日リズム / 培養細胞 / リポーター遺伝子 |
研究実績の概要 |
概日リズム睡眠覚醒障害患者として16歳以上の睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)41名および非24時間睡眠覚醒リズム障害(N24SWD)26名、また、対照群として標準的な睡眠時間を示す健常者50名を対象とした。患者群、対照群から採取した皮膚由来初代線維芽培養細胞に概日リポーター遺伝子Bmal1-lucを導入し、培養細胞内の発光リズムを測定した(末梢時計リズム評価系)。さらに、患者群の治療反応性の有無を、DSWPDについては睡眠時間帯の中点、N24SWDについては睡眠覚醒リズム周期を産出し、それらを指標として決定した。N24SWD患者群では、半数は対照群と変わらない末梢時計リズム周期であったが、全体的には対照群より有意に長いリズム周期を示した。また、N24SWD患者において、治療無反応群の末梢時計リズム周期は治療反応群より長かった。一方、DSWPD患者群では周期長の違いや治療反応性との関係は認められなかった。N24SWDの発症にはリズム周期の延長が関わっていること、しかし他の発症要因(光同調能、位相反応性など)も存在すること、さらに、周期長が治療反応性を予測する上で有用なバイオマーカーとなる可能性が示された。また、気分調整薬リチウムをはじめとする種々の薬物が生物時計に及ぼす影響を調べるために、不死化培養細胞U2OSに3種類の異なる概日リポーター遺伝子をそれぞれ導入した数種類の培養細胞安定株を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概日リズム睡眠覚醒障害の生物時計機能を評価し、N24SWDの発症にはリズム周期の延長が関わっていること、他の発症要因(光同調能、位相反応性など)も存在すること、周期長が治療反応性の有用なマーカーとなる可能性を明らかにした。このことから、末梢時計リズム評価系を活用することで、睡眠覚醒リズム異常の発症機序解明や新たな治療薬の探索・同定、治療反応性の推定につながることが期待される。また、生物時計と気分調節の関係を調べるために有用な概日リポーター遺伝子安定導入培養細胞株を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
末梢時計リズムの周期長が疾患発症、治療反応性など臨床病態を予測するマーカーとなるか検証を進める。また、末梢時計リズム評価系を用いて、治療候補物質のスクリーニングシステムの構築を目指す。概日リポーター遺伝子安定導入培養細胞株を用いて気分調整薬をはじめとする種々の薬物が生物時計機能に作用するシグナルパスウェイを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に収集した実験データの処理および解析を行ったため、人件費が必要となったが物品費は減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
新しい試薬類や機器の購入、また、成果発表のため学会参加費、旅費、さらに、論文発表のため英文校正や出版料に使用する予定である。
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