研究課題
概日リズム睡眠障害患者では生物時計の調節障害に加えて気分調節の異常が併存していることが明らかにされている。Wntシグナルは、胚発生とガン化に関わる非常に重要なシグナル伝達経路であり、胚性幹細胞(ES細胞)や神経幹細胞から神経へ分化する上でも必要なシグナルであることが示唆されている。気分安定薬として用いられるリチウムは、脳内ではGSK3を阻害すること、βカテニン量を増すこと、Wntシグナル・βカテニン経路を介する遺伝子発現を活発にすることが知られている。さらに、GSK3βを過剰発現させたトランスジェニック(Tg)動物では躁病様の行動異常を示すこと、βカテニンを過剰発現させたTg動物では抑うつ行動や不安様行動が減少することが報告されている。これらの知見から、リチウムの作用メカニズムにWntシグナル系が介在していると考えられている。前年度作成した不死化細胞に概日リポーター遺伝子を導入した培養細胞安定株を用いて、リチウムとWntシグナルが生物時計に与える影響を調べた。概日リポーター培養細胞安定株に異なる濃度のリチウムを添加し遺伝子発現リズムの変化を経時的に測定した。また、Wntシグナル系コアクチベーターを添加し、時計遺伝子発現リズムの変化を経時的に測定した。さらに、リチウムとWntシグナル系コアクチベーターを組み合わせて、Wntシグナル系コアクチベーターはリチウムが時計遺伝子に与える影響に変化を及ぼすかどうか比較、検証を行った。
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Translational Psychiatry
巻: 7 ページ: e1106
10.1038/tp.2017.75
https://www.ncnp.go.jp/press/release.html?no=344