研究課題
本研究は、非侵襲的検体検査として注目されている呼気ガス検査を活用し、安定同位体である13C-トリプトファンを用いて、その主要代謝経路であるキヌレニン経路の活性を推定し、気分障害や統合失調症の病態解明に役立てることを目的とする。本年度は、気分障害に関する仮説を基に動物実験を試みた。悪性腫瘍患者の約半数に不安、抑うつ等何らかの精神症状があり、15-20%にうつ病が合併しているといわれている。一方、腫瘍局所におけるIDOの活性上昇とそれに伴うトリプトファンの枯渇は、T細胞やNK細胞の増殖抑制や制御性T細胞の活性化をもたらして腫瘍免疫回避の機序に関与するとされ、トリプトファンーキヌレニン経路のIDO/TDOは腫瘍免疫との関係について多数報告されている。したがって、うつ病と悪性腫瘍の間にはトリプトファン代謝パターンの変化が共通の病態としてあり、13C-トリプトファン呼気検査によりそれが観察可能なのではないかと考えた。DMBA(dimethyl benz-(α)-anthracene)誘発性乳がんモデルラット14匹、コントロールラット13匹について13C-トリプトファン呼気検査を行った。しかし両者の呼気検査インデックス(AUC)の間に有意な差は認められなかった。今後、うつ病モデルラットの13C-トリプトファン呼気検査のデータや、DMBA誘発性乳がんモデルラットから得られた腫瘍組織の病理診断結果のデータを追加して、さらに比較・検討する必要があると考えられた。
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Journal of Psychiatric Research
巻: 99 ページ: 142-150
10.1016/j.jpsychires.2018.01.019.