研究課題/領域番号 |
15K09820
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藁谷 正明 東北大学, 加齢医学研究所, 非常勤講師 (50533775)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / バイオマーカー / MRS / アルカデイン / アディポネクチン / パーキンソン病 / シヌクレイン / PMCA法 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)に関しては、構造的MRIやMRスペクトロスコピー(MRS)等のMRIを用いた脳画像診断法と患者脳脊髄液(CSF)と血漿(Plasma)中のバイオマーカー候補の探索を引き続き継続している。 体液バイオマーカー候補として、北海道大学 鈴木利治教授らが発見した脳内γ-セクレターゼによるアルカデイン代謝産物であるp3-Alcsを中心に鈴木利治教授の協力を得て検討している。 2014年度にAD患者の血漿中のp3-Alcα35が高値を示すことを発表した(J. Alzheimers Dis. 2014, 39, 861-870)。さらに同じアルカデイン代謝産物の1つであるp3-Alcα38がADと軽度認知症(MCI)患者のCSFで有意に高値で、CSF中Aβ42と逆相関することを見出している(未発表)。p3-Alcsが新たなるADの早期診断バイオマーカ―になりうる可能性が示された。さらにplasma中のp3-Alcsの測定法も開発中で、将来的には非侵襲的AD血漿バイオマーカーの確立を目指す。 また、ADが糖尿病を含めた生活習慣病患者での発症が多いことに着目し、メタボリック症候群に関連する血清中とCSF中アディポネクチン(APN)を測定し、その関連を検討した。ADでは血清APNが優位に高値で、CSF中では低値であることを見出した(J Alzheimers Dis. 2016;52:1453-9.)。APN機能が、ADの病態に関与することが示唆された。 一方、パーキンソン病(PD)に関しては、テキサス大学のClaudio Soto教授、京都府立医科大学の徳田教授との共同研究で、PDのCSFからPMCA法を用いて異常αシヌクレインを特異的に増幅し、PDのCSF診断が可能であることを示した。(JAMA Neurol 2017、74、163-172)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日常診療で物忘れ外来、パーキンソン病外来を受診する高齢者を対象にMRIやMRSで認知症の早期診断が可能になった。またこれらの患者から得た血漿、髄液を用いて脳内アルカデイン代謝産物を測定し、髄液中では有用なアルツハイマー病のバイオマーカー候補であることがわかった。さらにこれらについて血漿中で検討し、現在、アルツハイマー病の血液診断マーカーの確立を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、北海道大学の鈴木利治教授との共同研究で脳内アルカデイン代謝産物の血漿中同物質の測定法の確立を目指している。 さらにこれらの血漿中アルカデイン代謝産物とアミロイドPETによる脳内アミロイド沈着量の相関を検討し、血漿中アルカデイン代謝産物がアルツハイマー病の血液診断法として有用であるかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、アルツハイマー病の血液、髄液診断の確立を目指すべく、患者の協力を得て、おもに髄液中のAB42とリン酸化タウの測定と、MRIによる関連を検討し、 共同研究も進めている。 昨年度は、患者のリクルート数がやや少なかったためか上記の検査に費やす研究費に余裕ができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
さらに患者のリクルートを行い、より多くの患者の協力を得て、血漿、髄液中アルツハイマー病の新規バイオマーカー及びMRIを主たる画像診断として、無症候性の軽度認知症外およびADのriskを有する方々のスクリーニング法を本研究の集大成として成果を目指す。 測定等にあまった研究費を使用する。
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