研究課題
(1) 傍正中視床下部の病変により2次性にオレキシン神経が障害された過眠症が多く報告されており、2004年にMSのサブタイプであるNMOに特異的に検出される自己抗体(NMO-IgG)が発見され、NMO-IgGの標的抗原は脳内の水分子チャネルであるaquaporin-4 (AQP4)であることが見出された。髄液オレキシン値の測定、過眠症状を含む臨床症状を検討した。これまでに40例の検討を行っている。髄液オレキシンは低値が15名、中間値が25名であった。これら髄液オレキシン値は、免疫抑制療法後にいずれも正常化した。間脳・視床下部と第四脳室周囲にはAQP4が高発現するため、この抗体を介した免疫学的機序による障害が生じ、同部位に存在するオレキシン神経も二次的に障害され、過眠症・ナルコレプシーを来している可能性が考えられた。(2) これまでに経験した抗NMDA受容体抗体陽性例は21例となり、これを大きく3群に分割して比較検討を行った。典型的な辺縁系脳炎の経過をたどる群(脳炎群)、精神疾患と診断され加療が行われていた群(精神疾患群)、精神症状を伴う睡眠障害群(睡眠障害群)とした。第2グループは、精神科疾患の診断よりさらに、ⅰ統合失調症あるいは統合失調感情障害と診断された群、ⅱうつ病あるいは神経症と診断された群に分類した。また、第3グループも、ベースにある睡眠障害よりⅰナルコレプシーと診断された群、ⅱ Klein-Levin症候群と診断された群に分けた。精神症状が主体となる群に関しては、① m-ECT(電気けいれん療法)が奏功し、他の治療法では症状の軽快を得られなかった例、② 各種薬剤抵抗性で難治例と判断された例、③ 精神科にて、悪性緊張病と診断・加療を行われた例、④ 非典型的な経過をたどり診断が二転三転するなど定まらない長期経過例、などに自己抗体陽性例が多数認められると考えている。
2: おおむね順調に進展している
AQP4, NMDARに起因する睡眠障害と精神疾患の病態の解明を行うために、多くの症例を集積して、抗体の測定を行っている。おおむね順調に進んでいると考える。
連携研究先の田中惠子教授が測定に関与したNMDA脳炎疑いの症例に関しても、連携して解析を進めてゆく予定である。
予定していた人件費の支払いが不要になった為
研究に使用する物品の購入
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