研究課題
(1) 傍正中視床下部の病変により2次性にオレキシン神経が障害された過眠症が多く報告されており、2004年にMSのサブタイプであるNMOに特異的に検出される自己抗体が発見され、その標的抗原は脳内の水分子チャネルであるAQP4であることが見出された。AQP4抗体が陰性でもMOG抗体陽性のNMO spectrum disorder 症例など報告されており、亜型が存在する。AQP4抗体の陽性例、陰性例、および抗MOG抗体陽性例のオレキシン値についても検討した。NMO31症例のうちで、AQP4抗体陽性例は23例、AQP4抗体陰性例は8例、男性2例のみMOG抗体陽性であった。オレキシン値はMOG陽性例では比較的に高値であった。両抗体とも陰性例では、ステロイドパルスやγグロブリン療法後のオレキシン値の改善が乏しかった。(2) これまでに経験した抗NMDA受容体抗体陽性例は23例となり、これを大きく3群に分割して比較検討を行った。典型的な辺縁系脳炎 の経過をたどる群(脳炎群)、精神疾患と診断され加療が行われていた群(精神疾患群)、精神症状を伴う睡眠障害群(睡眠障害群) とした。第2グループは、精神科疾患の診断よりさらに、i統合失調症あるいは統合失調感情障害と診断された群、iiうつ病あるいは 神経症と診断された群に分類した。また、第3グループも、ベースにある睡眠障害よりiナルコレプシーと診断された群、ii Klein-Levin症候群と診断された群に分けた。精神症状が主体となる群に関しては、1 ECT(電気けいれん療法)が奏功し、他の治療法では 症状の軽快を得られなかった例、2 各種薬剤抵抗性で難治例と判断された例、3 精神科にて、悪性緊張病と診断・加療を行われた例 、4 非典型的な経過をたどり診断が二転三転するなど定まらない長期経過例、などに自己抗体陽性例が多数認められると考えている 。
2: おおむね順調に進展している
AQP4, NMDARに起因する睡眠障害と精神疾患の病態の解明を行うために、多くの症例を集積して、抗体の測定を行っている。おおむね 順調に進んでいると考える。
連携研究先の田中惠子教授が測定に関与した脳脊髄液にての検索によるNMDA脳炎疑いの症例に関しても、連携して解析を進めてゆく予定である。
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