研究課題/領域番号 |
15K09822
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
東 晋二 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30365647)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋委縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / TDP-43 / FUS / タンパク質凝集体 / RNA代謝 |
研究実績の概要 |
筋委縮性側索硬化症や前頭側頭葉変性症の患者脳内の凝集体の主要構成タンパク質として同定されたTDP-43 (TAR DNA binding protein) やFUS(Fused in sarcoma)は主に細胞核に局在するたんぱく質であり、転写やスプライシング、翻訳などの遺伝子発現の調整に関与していると考えられている。そのため、上記神経変性疾患では、核内でのDNAからRNAへの転写や細胞質内でのRNAからタンパク質への翻訳過程において異常を生じ、病気の発症や進行を引き起こしているとの仮説がある。 当研究では、RNA-結合タンパク質の異常がRNAの動態にどのような影響を与えているのかを調べるために、TDP-43が患者脳内で断片化され、それが細胞質内に異常蓄積する現象に着目して、核内移行シグナルを有するN-末端領域、RNA認識モチーフ、プリオン様配列を有するC-末端領域の各ドメイン領域を参考に、様々な断片化TDP-43のconstractを作成し、それを細胞内に発現する実験系を行った。これらの断片化TDP-43は、それぞれ全長TDP-43とは異なった細胞内局在を示し、それが及ぼすRNA局在の変化を観察した。RNAと結合する断片化TDP-43だけでなく、RNAと結合することなくその局在に影響を与える領域も存在し、TDP-43-RNA間に起きる様々な相互作用の結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究は、神経変性疾患関連タンパク質の中で、RNA結合能を有するタンパク質を使用して、タンパク質-RNA相互作用の影響を研究することが目的である。そのためには、疾患に病態生理に関連した現象を利用して、タンパク質-RNA相互作用を調べる必要があると考えている。そのため、より疾患脳内での現象を知るために、断片化TDP-43を使用する実験系を組み立てた。これらにより、TDP-43の断片化による変化はRNA動態に大きな影響を与えることを調べた。また、RNAはタンパク質やDNAと比してより分解されやすい物質であるが、疾患脳で見られる断片化や凝集体形成をきたす細胞系の確立は、実験の実施をより簡便かつ効果的に推進させるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
当研究の最終的な目的は病気の病態機序を知ることにある。そのため、今後も引き続き疾患脳で見られるタンパク質変化を再現して、それが及ぼすRNA変化を丁寧に追っていくと同時に、それが最終的に細胞の運命にどのような影響を与えているのかを調べていくことが重要となるであろう。特に神経変性疾患は最終的に細胞死をきたす疾患である。そのため、細胞のストレス耐性や細胞生存に関しての実験系を確立していくことが必要となるであろう。 これらの研究によって病気の病態機序をより深く知るとともに、最終的には治療ターゲットの発見とその研究につなげていけるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究のための試薬等が研究施設の残余を使用することなどにより節約が可能となったことが挙げられ、また、初年度ということもあり、研究成果の学会発表などが限られたこともあり、出張などを行わなかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はより研究の推進を図るために、試薬等の消耗品に加えて備品なども購入してより効率的な研究を行える環境を整えていく予定である。
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