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2016 年度 実施状況報告書

タンパク質-RNA相互作用が及ぼす神経変性疾患の病態機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K09822
研究機関筑波大学

研究代表者

東 晋二  筑波大学, 医学医療系, 講師 (30365647)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード神経変性疾患 / 筋委縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / TDP-43 / FUS / 凝集体形成
研究実績の概要

今回の研究の目的は、筋委縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、略称:ALS)や前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration、略称:FTLD)の疾患関連たんぱく質であるTDP-43 (TAR DNA binding protein) とFUS(Fused in sarcoma)がRNA結合たんぱく質であることに注目し、これらの疾患の中で起きているRNA動態の異常を同定することである。
初年度はTDP-43のRNA動態への相互作用を調べるために、患者脳内で起きているTDP-43の断片化、凝集化を培養細胞内で再現した。これらの細胞内ではRNAの局在異常が生じており、一部の細胞ではTDP-43の凝集体と共局在を起こしていた。これらの現象は正常細胞内では通常観察されない現象あり、細胞変性との関連を疑わせるものであった。
2年目は、もう1つのALS・FTLD関連RNA結合タンパク質であるFUSがひきおこすRNAとの相互作用を研究した。FUSもTDP-43と同じように疾患脳内では細胞内局在に異常をきたし、封入体形成をおこす。しかし、我々の実験では、FUSはTDP-43と比較して患者脳内での不溶化成分の比率が少なく、また、断片化・高リン酸化などの特徴的な生化学的な変化もみられない。これらの結果はこれまでの既存の報告とも一致するものである。そのために今回の実験では細胞系ではなく、より凝集化を直接的に観察することができるレコンビナントたんぱく質を使った試験管内凝集実験を行った。我々が使用したこの実験系ではRNAの存在下でFUSはより有意に凝集化を引きおこしていた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この2年間の研究を経て、ALS・FTLD関連RNA結合タンパク質は、その凝集によってRNA局在に影響を与え、あるいはRNAの存在下によってさらに凝集化が引き起こされる現象を観察することができ、神経変性過程におけるRNAとの相互作用の存在を見いだすことできた。
これは今回の研究の一番の目的であることから、研究はおおむね順調に進行していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は、今回見出した現象が神経変性過程、すなわち細胞の機能障害や神経細胞死とどのように関連しているのかを観察することが最終的な目的となる。そのためにアポトーシスなどの現象への影響を研究していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初の予定に沿って実験を行いその必要に応じて研究費の使用を続けていったが、前年度の実験解析を踏まえて本年度の実験系を決める必要があったため、必要試薬の選定が間に合わず、当初の見込み額と執行額に差が生じた。これらの実験内容を決定次第、試薬などを購入し、計画書通りに実験を進めていく。

次年度使用額の使用計画

今後、細胞死や細胞の機能障害を解析するために、計画書にかかれた通りに使用を継続していく。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] 認知症の生物学的研究-Update シヌクレイノパチー,TDP-43プロテイノパチー,およびポリグルタミン病.2017

    • 著者名/発表者名
      東 晋二,新井哲明
    • 雑誌名

      老年精神医学雑誌

      巻: 28 ページ: 123-8

  • [雑誌論文] A family with hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids caused by a novel c.2442+2T>C mutation in the CSF1R gene.2016

    • 著者名/発表者名
      Kawakami I, Iseki E, Kasanuki K, Minegishi M, Sato K, Hino H, Shibuya K, Fujisawa K, Higashi S, Akiyama H, Furuta A, Takanashi M, Li Y, Hattori N, Mitsuyama Y, Arai H
    • 雑誌名

      J Neurol Sci

      巻: 15 ページ: 349-55

    • DOI

      10.1016/j.jns.2016.06.013.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 原発性進行性失語症をとりまく現状と課題 : 家族会活動を通じて2016

    • 著者名/発表者名
      東晋二、越部裕子、江湖山さおり、野尻美流、根本清貴、新井哲明
    • 雑誌名

      精神医学

      巻: 58 ページ: 847-54

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.11477/mf.1405205249

    • 査読あり
  • [学会発表] 原発性進行性失語症の障害脳領域における標準失語症検査の比較検討.2016

    • 著者名/発表者名
      東 晋二,野尻美流,越部裕子,塚田恵鯉子,根本清貴,新井哲明
    • 学会等名
      第35回日本認知症学会学術集会
    • 発表場所
      東京都千代田区(東京国際フォーラム)
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-03
  • [学会発表] 茨城県認知症疾患医療センターによる災害時高齢者宅訪問活動.2016

    • 著者名/発表者名
      新井哲明,高橋 晶,太刀川和弘,根本清貴,東 晋二,塚田恵鯉子,江湖山さおり,堀 孝文
    • 学会等名
      第35回日本認知症学会学術集会
    • 発表場所
      東京都千代田区(東京国際フォーラム)
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-03
  • [学会発表] 上腸間膜動脈症候群を合併した 回避/制限性食物摂食障害の 11 歳女児例2016

    • 著者名/発表者名
      渡辺理沙, 東晋二, 渡部衣美, 日高響子, 大戸達之, 根本清貴, 新井 哲明
    • 学会等名
      東京精神医学会第107回学術集会
    • 発表場所
      東京都文京区(東京医科歯科大学M&Dタワー)
    • 年月日
      2016-07-16 – 2016-07-16
  • [学会発表] 精神疾患合併妊婦の周産期における病状悪化リスクの検討.2016

    • 著者名/発表者名
      渡部 衣美, 根本 清貴, 小畠 真奈, 早川 絢子, 塚田 恵鯉子, 井出 政行, 松﨑 朝樹, 東 晋二, 鈴木 利人, 新井 哲明
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会学術総会
    • 発表場所
      千葉県千葉市(幕張メッセ)
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] 平成27年関東・東北豪雨における常総市水害支援(3)茨城県認知症疾患医療センターの訪問活動.2016

    • 著者名/発表者名
      新井 哲明, 安部 秀三, 岡田 正樹, 須磨崎 加寿子, 高濱 浩輔, 田中 芳郎, 山田 武, 高橋 晶, 根本 清貴, 太刀川 弘和, 河合 伸念, 東 晋二, 塚田 恵鯉子, 江湖山 さおり, 堀 孝文
    • 学会等名
      第112回日本精神神経学会学術総会
    • 発表場所
      千葉県千葉市(幕張メッセ)
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-04
  • [学会発表] 初診時に緊張病症候群と診断された FTLD-TDP の一例.2016

    • 著者名/発表者名
      渡辺亮平,  河上緒, 朝岡俊泰, 大島健一, 新里和弘, 東 晋二, 女屋光基, 新井信隆, 長谷川成人, 秋山治彦, 新井哲明
    • 学会等名
      第57回日本神経病理学会総会学術研究会,
    • 発表場所
      青森県弘前市(ホテルニューキャッスル)
    • 年月日
      2016-06-01 – 2016-06-03

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公開日: 2018-01-16  

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