東京大学医学部附属病院精神神経科外来もしくは病棟において、同意を得られたリスク期患者、初発統合失調症患者に対して、事象関連電位の測定を行った。測定は2回行い、第1回目の測定の約1から2年後に2回目の測定を行った。リスク期患者16名(男性7名女性9名)、初発統合失調症患者14名(男性11名女性3名)、健常被験者16名(男性9名女性7名)に対して、聴覚mismatch negativity(MMN)課題を用いた事象関連電位を測定した。なお本研究は東京大学倫理委員会の承認を得ている。 逸脱刺激の持続時間を変化させて得られる持続時間MMNと周波数を変化させて得られる周波数MMNとの2種類の事象関連電位成分について、MMNの振幅を各個人で測定し、統計解析を行った。 第1回目の測定では、持続時間MMNのみが、リスク期患者と初発期患者において振幅の有意な減衰が認められた。周波数MMNでは群間差は認められなかった。 さらに第2回目の測定結果を踏まえた縦断的解析では、持続時間MMN成分も周波数MMN成分ともに第1回目と第2回目では変化がみられなかった。 これらの結果より、持続時間MMNが精神病早期における素因をとらえる指標となることが示された。また、これらは精神病の早期においては、進行性変化がみられないことが明らかとなった。持続時間MMNが有用なバイオマーカーとなる可能性を秘めているが、これは進行性の脳病態を反映するのではなく、発達的素因を反映する可能性が示された。
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