研究課題
抑うつ、不安、身体愁訴、妄想などの老年期発症の精神症状に注目し、神経画像や睡眠ポリグラフ検査による各検査所見より、背景病理との対応を検討した。臨床病理学的にレビー小体病に疾患特異性が高いレム睡眠行動障害(RBD)に注目し、睡眠ポリグラフ検査上のREM sleep without atonia (RWA)所見を呈し、初期臨床診断が身体症状症である5症例について検討した。最終的に3症例でレビー小体型認知症の臨床診断基準を満たし、1症例ではRBDの病歴を認めず、RWAのみ確認された。残りの2例では、RBDの病歴を認めなかったが、レビー小体病の臨床的特徴を一部示した。中高年発症の身体症状症患者において、RBDが顕在化していないが、RWA所見が背景のレビー病理を疑う契機となる可能性がある。また、身体不定愁訴を呈し、レビー小体型認知症の中核症状を認めない剖検例を臨床病理学的に検討し、軽度のアルツハイマー病理(神経原線維変化ブラークステージ0-2)を併発するTransitional Lewy body disease (TLBD)の病理学的診断であった。本症例の中脳黒質神経細胞脱落は軽度であり、パーキンソン症状が明らかでないことと合致していた。DLBの病理診断基準では、High-likelihoodに分類される病理カテゴリーであり、先行研究結果を踏まえ、likelihood分類の再考が必要性が示唆された。これらの結果は、身体不定愁訴が、レビー小体病の1臨床亜型である可能性があり、さらなる症例の蓄積が必要である。さらに初期の臨床診断は、アルツハイマー病であり、その後神経症状が顕在化し、病理学的には皮質基底核変性症であった症例を認めた。脳血流SPECTでは、アルツハイマー病の特徴を有しており、病初期の記憶障害を呈する皮質基底核変性症では、慎重な臨床診断が必要と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
神経病理学的診断結果とともに、脳形態画像、脳血流SPECTなどの神経画像を中心とした検査所見を比較することで、各症例の神経基盤と神経画像についての臨床病理学的相関について検討した。脳血流SPECTをはじめとした脳機能画像は、病初期に施行されることが多いため、初期症状と臨床経過に着眼し、臨床病理相関について検討する必要があると考えられた。
病理学的評価とともに神経画像を主とした臨床的評価との相関について、引き続き検討を行う。ドパミントランスポーターシンチグラフィーを施行した剖検症例数が少ない場合、強い臨床病理学的相関が示されているレム睡眠行動障害にも着眼し、睡眠ポリグラフ検査結果と臨床画像の関係についても検討を行う。うつ病や身体症状症を呈する老年期精神障害患者では、各検査において半定量的評価方法(Specific binding ratioなど)を用いて、臨床所見との関係を明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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