研究課題/領域番号 |
15K09824
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤城 弘樹 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (20536924)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嗜銀顆粒病 / 神経原線維変化 / 老人斑 / レビー病理 / 神経画像 / レビー小体病 / アルツハイマー病 / タウ |
研究実績の概要 |
双極性障害患者剖検脳に嗜銀顆粒病(AGD)が高頻度に認められることや、高齢期発症の精神病性障害患者剖検脳にコントロールと比較してレビー小体病(LBD)、皮質基底核変性症(CBD)、AGDの出現頻度が高いことが報告されている。しかし、精神疾患と神経変性疾患の関係についての報告は数少ない。系統的病理学的評価を終えた精神科ブレインバンクの49症例における神経変性疾患の出現頻度と臨床像について検討した。精神症状の発症年齢をもとに分類し、とくにAGDの出現頻度に注目した。全体でのAGDの出現頻度は25.5%であった。少なくとも経過の中期まで認知症を呈さなかった精神病性障害様の症例は、発症年齢が65歳以上では4例存在し、その内AGDは2例であった。双極性障害3症例では、AGDは認めなかった。アルツハイマー病(AD)についてはIntermediate-あるいはHigh-likelihood、LBDについてはlimbicあるいはneocortical subtype、AGDについてはSaitoステージⅡあるいはⅢを有意に神経変性疾患ありと定義した場合、初診時年齢別の神経変性疾患の頻度は、40歳未満4/17、40歳代0/2、50歳代4/6、60歳代4/5、70歳以上15/19であった。50歳未満群では、AD(Intermediate-likelihood)が2症例、ハンチントン病が2症例であった。50歳以上群では、AD12症例(High-likelihood 7症例、Intermediate-likelihood 5症例)、LBD5症例(辺縁型4症例、大脳皮質型1症例)、CBD1症例、進行性核上性麻痺1症例、AGD7症例であった。50歳以上で初めて精神症状を呈する症例では神経変性疾患の関与を考慮すべきであり、一方50歳未満発症の精神疾患における神経変性疾患の関与は低いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭部CT/MRIの形態画像を含む臨床病理学的評価は、おおむね順調に進んでいる。しかし、精神科病院を基盤としたブレインバンクの剖検例が対象であり、同施設内においては、核医学検査は実施されていない。そのため、生前に123I-ioflupane(123I-FP-CIT)ドパミントランスポーターシンチグラフィーや123I-MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)心筋シンチグラフィ―が実施された剖検例が蓄積されていない。他院で神経画像検査は実施可能となっているため、引き続き剖検症例の集積を継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
精神科病院を基盤としたブレインバンクであるため、脳機能画像を実施している剖検例数が限られているため、臨床情報を整理するうえで的確な症例選定と評価項目の設定に工夫を要すると考えられる。ほぼすべての剖検例で頭部CT/MRIの脳形態画像は実施されていることから、ハンチントン病におけるVonsanttelら(1985)の評価方法を用いて、臨床病理学的検討を行う予定である。精神症状と運動症状の先行症状の臨床経過に注目することで、病変分布との対応を検討していく。また、レビー小体型認知症の診断基準が改訂されたため、病理学的亜型を再分類する必要が生じるが、未だ臨床病理学的報告はなく、本研究が診断基準の妥当性を検討することとなる。とくに精神科病院の剖検症例を検討することは、レビー小体病のスペクトラムを明らかにする上で重要である。
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