研究課題/領域番号 |
15K09824
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
藤城 弘樹 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (20536924)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レビー小体病 / レム睡眠行動障害 / 睡眠ポリグラフ検査 / 黒質 / 基底核ドパミントランスポーター / MIBG心筋シンチグラフィー / うつ病 |
研究実績の概要 |
2017年に改定されたレビー小体型認知症(DLB)の診断基準では、幻視、パーキンソニズム、認知機能の変動に加えて、レム睡眠行動障害(RBD)が示唆的特徴から、第4の中核的特徴に格上げされた。また、示唆的特徴が廃止された一方で、基底核ドパミントランスポーターの取り込み低下、MIBG心筋シンチグラフィーの取り込み低下、睡眠ポリグラフ検査(PSG)によるREM sleep without atonia(RWA)の3項目が指標的バイオマーカーと定義された。DLBの神経変性の病態を示す神経画像とならんで、RWAが指標的バイオマーカーとなったことは、臨床病理学的研究の結果からRBDのDLBに対する疾患特異性の高さを反映していると考えられる。老年期精神障害とレビー小体病の鑑別診断において、PSGによるレム睡眠行動障害の診断が役立つことを示し、MIBG心筋シンチグラフィーの取り込み低下と相関することを明らかにした。とくにRBDの病歴聴取とMIBG心筋シンチグラフィーによる鑑別診断の可能性を示した。また、高齢発症のうつ病とレビー小体病の関係において、抗うつ剤とRWA所見(RBD症状を含む)の関連性を指摘して、RBDを手掛かりとして、老年期精神障害を再考する重要性を報告した。また、連続剖検脳を用いて、DLBの病理診断基準を満たした症例の初発症状を検討し、先行研究に基づいた3臨床亜型、すなわち軽度認知障害発症型、せん妄発症型、精神症状発症型に分類できることを確認した。黒質神経細胞脱落の程度は多様であり、パーキンソンニズムの有無との関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭部CT/MRIの形態画像を含む臨床病理学的評価は、おおむね順調に進んでいる。しかし、精神科病院において入院加療を要し、剖検に至った症例が対象になるため、同施設内では、核医学検査は実施されていない。その結果、生前に123I-ioflupane(123I-FP-CIT)基底核ドパミントランスポーターシンチグラフィーや 123I-MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)心筋シンチグラフィ―が実施された剖検症例数は数少ないのが問題点である。他院で神経画像検査はしばしば実施されるようになっているため、引き続き剖検症例の集積を継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
精神科病院を基盤としたブレインバンクであるため、脳機能画像を実施している剖検数が限られているため、臨床情報を整理するうえで的確な症例選定と評価項目の設定に工夫を要すると考えられる。2017年に改定されたレビー小体型認知症の病理学的診断基準に基づき、病理学的亜型を再分類することで、標準化された病理学的分類に基づいた臨床病理学的検討が可能となる。この改訂された診断基準の中で黒質神経細胞脱落の半定量方法が導入されており、老年期発症の精神症状が主体となった症例における生前のパーキンソニズムの症状の有無との相関も行う予定である。また、アルツハイマー病理、とくに脳内アミロイド沈着と臨床経過を検討することで、近年知見が数多く蓄積されつつある認知機能低下とアミロイド沈着の関係を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年の診断基準改定のために開催された米国フロリダの国際会議に続き、2019年6月24-26日に米国ラスベガスでレビー小体型認知症の国際会議の開催が急遽決定となった。本会議では、レビー小体型認知症の前駆状態が主題となり、新たな診断基準について議論されることが決まっている。レビー小体型認知症の早期診断では、前駆期に精神症状を呈し、老年期精神障害との鑑別診断が重要課題となっている。そのため、本研究課題において遅延している研究データのさらなる蓄積を行い、当該研究テーマの研究成果について、本会議で報告する予定である。本会議において、議論することで、国際的な情報発信となるばかりでなく、本研究結果をさらに吟味し、国際学術誌へ投稿の準備に不可欠だと考えている。これらを遂行するために、継続したデータの蓄積と、国際会議参加・発表にかかわる準備・費用、学術誌への投稿に使用する予定である。
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