研究課題/領域番号 |
15K09827
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
壁下 康信 大阪大学, 保健センター, 助教 (60700169)
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研究分担者 |
足立 浩祥 大阪大学, 保健センター, 准教授 (00303785)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 夜間睡眠評価 / 自律神経活動 / 交感神経変動評価 / 末梢脈波振幅 / アルゴリズム開発 / 睡眠呼吸障害 / 睡眠時無呼吸症候群 |
研究実績の概要 |
夜間睡眠評価で重要な終夜ポリグラフィ(PSG)には、夜間の交感神経変動を継時的かつ定量的評価が出来ない弱点がある。今回の研究においては、夜間睡眠中の異常な交感神経活動の変動を検出し、簡便・継時的定量評価測定法のためのアルゴリズムの開発をすること、および、夜間睡眠中の自律神経活動評価の臨床的評価法として確立し、罹患者の多い睡眠呼吸障害の持続陽圧呼吸療法(CPAP)や、心不全治療での自律神経変動をリアルタイムに評価できる指標としてだけでなく、その他多くの疾病の夜間病態管理に応用可能な技術となることを目指して本研究に従事している。 平成27年度においては、PSG 検査と並行して、振幅の低下が交感神経の活性指標として確立されている末梢脈波振幅(PWA:Pulse Wave Amplitude)をデジタル信号として導出・記録する方法を確立した。PWA の変動の臨床的に有意な検出閾値は、現在明確に特定されていないが、多くの先行論文では(Delessert A et al.SLEEP 2010; 33:1687-1692など)、PWA20%低下が目安とされている。今回は、厳密な測定を通じて、明確な閾値や波形変動様態による厳密な自律神経変動の同定を目指すため、汎用のPSGデジタル解析ソフトウェア用いて記録したPWA を、デジタル時系列信号として出力し、専用のソフトウェアで解析可能であることを確認した。これにより、時系列信号として解析を行い、PWA の変動を解析し、index として時系列で評価可能な手法として確立させる準備が完了した。今後、当初の計画に従い、夜間睡眠中の異常な自律神経変動としてPWA変化の変動の閾値を探索・同定すること、有病率の多い睡眠時無呼吸症候群をモデル疾患とし、検査・治療の過程で、その信頼性と妥当性を検証し、臨床有用性を検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度(初年度)においては、大阪大学医学部附属病院睡眠医療センターに保存されている既存PSGデータ、ならびに同年度中に同センターにて通常臨床において施行された患者PSGデータ(いずれのデータも、非連結匿名化したもの)をサンプルとし、探索的に末梢脈波振幅(PWA:Pulse Wave Amplitude)の解析を行った。加えて、PWAの厳密な測定を通じて、明確な閾値や波形変動様態による厳密な自律神経変動の同定を目指すため、汎用のPSGデジタル解析ソフトウェア用いて記録したPWA を、デジタル時系列信号として外部ファイルに出力し、そのデータを解析する専用のソフトウェアの有用性の確認が完了した。時系列データとしてPWA振幅データを可視化するとともに、振幅低下の程度と振幅低下持続時間、他の睡眠中のイベントとの関連付けが可能なであることも確認した。これにより、夜間睡眠中の異常な交感神経活動の変動を検出するため、末梢脈波振幅を用いた簡便・継時的定量評価測定法のための方法の開発は達成している。 当初予定していた初年度の研究対象者のリクルート(先行研究も多く、また器質的な慢性不眠のモデル疾患で罹患率も高い睡眠時無呼吸症候群(SAS)を対象モデル疾患として選定)、ならびに、前向きのPSG検査体制や実施体制の確立、およびデータの信頼性・妥当性の確保については、平成27年度は、その調査・準備の段階まで達成した。 一方、当初計画では平成28年度(2年目)以降において予定していたPWA導出のための末梢脈波波形のデジタル解析の確立が、予定よりも早く達成している。 上記の平成27年度の研究進捗状況と当初の研究計画を踏まえ、総合的な進捗状況として、(区分)(2)と記載した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づき、平成27年度に開発した脈波変動評価法が、自律神経変動評価法として、睡眠障害などに臨床応用可能か検証する。そのため、終夜睡眠ポリグラフィを実施した患者・これから終夜睡眠ポリグラフィ検査を実施予定となる患者のリクルートを推進する(先行研究も多く、また器質的な慢性不眠のモデル疾患で罹患率も高い睡眠時無呼吸症候群(SAS)を対象モデル疾患として選定する)。また、末梢脈波変動による自律神経系変動の解析指標が実際の日中のパフォーマンス、精神・心理学的症候、及び身体症状を反映するものであるかどうかの関連性を調べ、信頼性と妥当性を統計学的に検証する。加えて、今回の研究計画においてモデル疾患と策定した睡眠呼吸障害の治療のアウトカムとして、上記の症状群の改善を反映する、臨床的に異常となる閾値の決定を行い、新たな検査手法として臨床的意義を確立させる。また、治療的介入への検査応用の検討と心身障害へのリスク評価法として確立を行う。本研究中に調査・検査を施行した対象者に対して、同様の調査・検査を施行して年単位で継時変化を見る。持続陽圧呼吸療法(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)、もしくは口腔装具療法(OA: Oral Appliance)などのSASへの標準的治療を受けた場合、今回開発する自律神経変動解析法で改善が評価できるかを検証する。モデル疾患として選定したSASの結果を基に、今回我々の開発した解析法が、SASなどの睡眠呼吸障害だけでなく、心身の日中のパフォーマンスや精神的・心理的状態、及び心臓血管疾患を中心とした他の内科的な疾患の治療評価に応用可能であるか検討することを予定としている。
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