研究課題/領域番号 |
15K09829
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 泰司 神戸大学, 保健管理センター, 准教授 (00324921)
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研究分担者 |
阪井 一雄 宝塚医療大学, 保健医療学部, 教授 (80304096)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー / 非健忘 / 認知症 / 鑑別診断 / アミロイド / PET |
研究実績の概要 |
本年度は本研究期間3年のうち2年目である。この1年間で、神戸大学附属病院の認知症外来において、通常行っている認知症診断および鑑別のための一連の検査にて「非健忘型AD」と臨床診断された症例のなかから研究説明をしたうえで、書面による同意取得を得た計10症例に対して、協力研究機関である先端医療センターにてアミロイドPETを行った。 その結果、アミロイド陽性判定が7例(70%)、アミロイド陰性判定が3例(30%)であった。過去の大規模臨床研究(J-ADNIなど)の結果では、AD群(軽度)では約93%がアミロイド陽性判定であり、軽度認知障害(MCI)群においても約70%がアミロイド陽性判定と報告されていることから、今回の非健忘型ADと臨床診断された症例では、典型例(健忘型)のAD群と比較して、アミロイド陰性症例の割合が高い(30%>7%)ことが判明した。 現在、上記の結果をもとに、アミロイド陰性症例において新たな神経心理検査の追加バッテリーを検討したうえで、臨床診断の見直し等を行なう予定である。 また、これら、アミロイド陰性の3症例においては、患者様およびそのご家族に検査結果の説明を行った上で、すでに投薬中の抗AD薬の中止や他剤への治療方針の変更も行っている。 以上のとおり、非健忘型ADにおいては治療方針を決定する上でアミロイドPET検査の有用性が高いものと考えている。来年度はさらに症例を増やして、特に非健忘型ADの中でも本年度にエントリーのなかったサブタイプ(実行機能障害型、皮質基底核症候群)を疑う症例の追加を中心に目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の初年度(平成27年度)は、院内申請の手続きが遅れたため候補となる複数の研究被験者がおりながらエントリーできなかった。 しかし、研究2年目にあたる本年度は順調に研究が進み、当初見込まれていた被験者数を上回る計10症例の同意取得を得ることができた。また、本研究の目的と意義を被験者候補の患者様およびご家族に説明したところ、非常に高い率(90%以上)で同意を得ることができ、臨床におけるアミロイドPET検査のニーズの高さを実感した。 以上、来年度に向けて順調に本研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成29年度は、残っている研究予算額の範囲内(最大6症例と予想)で引き続き適切な症例を追加する予定である。なお、本年4月末の時点で新たに2症例の研究同意を取得しており研究は順調に進んでいる。 本研究の対象となる非健忘型ADの症例は、認知症専門外来受診者全体の約5%と少数であり、さらにそれらを臨床分類で分けた場合はサブタイプに偏りが出る。実際、昨年度にエントリーした10例のうち、言語障害型が6例、視空間障害型が4例を占めており、実行機能障害型と皮質基底核症候群含まれなかった。(なお、本年4月の同意取得2例のうち1例は実行機能障害型である) したがって、最終年度は皮質基底核症候群および実行機能障害型の症例を中心に新たな被験者を募集する予定であり、最終的には研究成果をまとめたうえで学会等で公表し、さらには学術論文への投稿も目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、本研究の対象となる被験者は「非健忘型アルツハイマー病」という比較的珍しい臨床症状を呈する症例であるため、年間を通して専門外来における出現率も5%程度と少ない。そのため、正確な年間の症例数を推定することが困難であることから多少の誤差がでることはやむを得ない。 なお、本研究の発表を本年度に行わなかったため、旅費や謝金の発生がなかったことも次年度への繰越金が発生することになったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り、研究2年目となる昨年度の研究進捗は順調であったことから、仮に最終年度の平成29年度に新たな被験者数を6例(120万円)と予想すれば、繰越しの20万円と合わせた次年度の予算総額は計160万円となり、残りの40万円で学会発表および論文投稿などを行う予定であり、実現可能な予算配分と考える。
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