研究課題
電気けいれん療法は、薬物抵抗性・難治性のうつ病、統合失調症に有効な身体療法である。しかし、その効果発現メカニズムについては、未だ仮説程度の解明状況である。そこで我々は、活性化グリアの観点から、電気けいれん療法の効果発現メカニズムを実験的に解明する一環として、Gunnラットに電気けいれん(ES; electroconvulsive shock)を施行し、統合失調症様およびうつ病様の異常行動の変化と、活性化グリアの形態的および機能的変化の相関を詳細に検討した。Gunnラットにおける統合失調症様の異常行動については、プレパルス抑制試験を用い、ES施行群と未施行(Sham)群を比較した。その結果、GunnラットSham群では、プレパルス抑制が阻害され、統合失調症と同じパターンを示したが、GunnラットES群では、阻害されたプレパルス抑制が有意に抑制された。更に、Gunnラットの脳における、ミクログリオーシスおよびアストログリオーシス、つまり活性化ミクログリアおよび活性化アストロサイトを、それぞれCD11b、GFAPを用いて、免疫組織化学的に定量分析したところ、海馬領域にてGunnラットSham群は、健常コントロールであるWistarラットに比べ、有意にCD11b、ならびにGFAPの発現が亢進しており、ミクログリアならびにアストロサイトの活性化が示唆された。Gunnラット海馬におけるCD11b、ならびにGFAPの発現亢進はESによって、有意に抑制され、ESによる活性化ミクログリア、および活性化アストロサイトの抑制効果が示唆された。以上の結果から、電気けいれんの治療効果は、活性化ミクログリア、および活性化アストロサイトを抑制することによって発現している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
H27年度に行った行動評価、および免疫組織化学的手法による海馬ミクログリオーシスの評価に引き続き、H28年度は、GFAPを用いたアストログリオーシスの定量的評価を遂行することができた。
電気けいれんの治療効果、ならびに活性化グリアに対する抑制効果の経時的変化を調べ、電気けいれんの効果がいつまで持続するのか解明する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
Journal of Neuroinflammation
巻: 13 ページ: 230-242
DOI 10.1186/s12974-016-0688-2
Neuropsychiatry
巻: 7 ページ: 610-617