研究課題
対象は、年齢、性別、推定IQが統計的に一致した双極性うつ病患者20例、大うつ病患者25例、健常者23例。これらの対象者の血液サンプル、near-infrared spectroscopy (NIRS), MRIデータを収集した。血液データは、これまでの当教室の経験から、mRNAのうち、glucocoriticoid receptor α(GRα)、SR protein splicing factor (SRp20, SRp30c)をreal-time PCRで測定し、内的コントロールとしてのGAPDHで補正した。NIRSは、語流暢検査を行い、課題中の酸素化ヘモグロビン濃度変化([oxyHb])の、課題立ち上がりの傾き、平均変化量、中央値を測定パラメータとして解析した。統計は分散分析を行った。その結果、GRαは、診断間の有意差が認められ(p < 0.01)、その後の検定で、うつ病患者と双極性障害患者は、健常者と比べ有意にGRαが高かった。双極性障害患者とうつ病患者は有意差は認められなかった。NIRSについては、平均変化量について、チャンネル番号23、32、43、45で診断間の有意差が認められた。その後の検定で、これら4つのチャンネルでうつ病患者は健常者と比べて有意に[OxyHb]の平均変化量が小さかった。双極性障害との違いはなかった。予備的検討ながら、GRαの結果は先行研究のそれと異なっていた。これはサンプルサイズの違い、うつ状態の重症度などが先行研究と異なる影響が考えられた。一方NIRSは、先行研究と同様の結果が得られた。うつ病患者においては語流暢課題における前頭葉低活動が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
サンプル収集は双極性うつ病患者20例、大うつ病患者25例、健常者23例と当初の予定以上にすすんでいる。脳画像解析については、NIRSは進んでいるものの、MRIについてはデータ収集の段階で解析に至っていない。血液分析は、スプライシング因子、グルココルチコイド受容体因子については解析しているが、その他の脳由来神経栄養因子など精神疾患に関与していると想定されている遺伝子についての検討は準備中である。
血液データについてはその他の候補となる遺伝子の解析を行う。画像については、MRIは自験例だけでなく他の施設のも合わせ大きなサンプルでの解析を計画している。
被験者リクルートに注力し、血液データ解析に用いた試薬量が少なかったために、当初の計画より少ない予算執行となり、次年度使用額が生じた。
今年度は血液及び画像解析に注力するため、当初の予算より多く解析への費用がかかると想定される。それに次年度使用額分を充てたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
PLoS One
巻: 11 ページ: e0150262
10.1371/journal.pone.0150262. eCollection 2016
Molecular Psychiatry
巻: in press ページ: in press
Schizophrenia Research
巻: 170 ページ: 109-114
10.1016/j.schres.2014.12.038