研究実績の概要 |
研究目的:生命を脅かすような心的外傷体験後に極度な不安・緊張状態が続く心的外傷後症候群(PTSD)では扁桃体が易刺激状態にある。気づきを伴わないサブリミナル恐怖顔刺激に対して健常者の扁桃体は反応しないが, PTSD患者の扁桃体は反応することが示唆されている。しかし,心的外傷を体験したすべての人がPTSDを発症するわけではなく,レジリエンス(こころのしなやかさ)が高い人はPTSDを発症しない。申請者は,PTSD患者の扁桃体活動性はレジリエンスと逆相関するという仮説を立てた。本研究は,PTSD患者を対象にサブリミナル恐怖表情刺激に対する扁桃体の活動を脳磁図(MEG)によりミリ秒単位で追跡し,レジリエンス尺度との相関解析行う。レジリエンスの神経基盤を解明できれば,PTSDの新規治療法の開発につながると考えられる。 研究実施計画:対象はPTSD群・健常者(NC)群各40人。視覚実験前に,特性不安尺度とジリエンス尺度を行う。視覚実験中は磁気シールドルーム内で脳磁場活動を記録する。視覚刺激は,2種類の表情(恐怖・中立)を3種類(BSF・HSF・LSF)に空間フィルタ加工して2種類の呈示時間(17ミリ秒・300ミリ秒)でランダム呈示して,各刺激画像開始を基準に画像ごとに別々にMEG反応を平均し,PTSD群とNC群を比較する。さらに,PTSD群・NC群の各人の扁桃体活動の大きさと特性不安尺度,レジリエンス尺度の相関解析を行う。 本年度の成果:NC成人18人にレジリエンス尺度と脳磁図計測を行った。また,疾患対照群としてうつ病患者10人にレジリエンス尺度を12週間あけて2回検査したところ,1回目の検査ではうつ病群はNC成人群よりも有意にレジリエンスが低下していた。12週後,抑うつ症状改善うつ病群は抑うつ症状残存うつ病群よりも有意にレジリエンスが上昇していた。
|