研究課題
福岡県久山町において、2007年の住民健診を受診した認知症のない60歳以上の高齢者のうち、朝の家庭血圧を3日以上測定できた1,674名を5年間前向きに追跡した。家庭血圧の測定には、上腕型家庭血圧計(HEM-7080IC)を使用した。「起床後1時間以内、排尿後、かつ朝食前および降圧薬服薬前」に座位血圧を3回測定し、その平均値を1日の血圧値とした。さらに、血圧の日間変動の指標として、28日間の収縮期血圧値(SBP)を用いてSBPの変動係数(CV)を計算し、CVレベルは4分位に分類した。追跡期間中に194例の認知症発症[アルツハイマー病(AD)は134例、血管性認知症(VaD)は 47例]を認めた。全認知症発症率(対1,000人年)は第1分位群12.4、第2分位群17.1、第3分位群22.7、第4分位群44.0であり、SBPのCVレベルの上昇に伴い有意に上昇した(傾向性p<0.01)。この関係は、多変量解析で性、年齢、学歴、降圧薬の服用、糖尿病、血清総コレステロール値、心電図異常、心血管病既往歴、BMI、喫煙、飲酒、運動、SBPを調整しても変わらなかった。第1分位群に対する全認知症発症のハザード比(多変量調整後)は、第2分位群 1.27 (95% 信頼区間 0.76-2.10)、第3分位群1.29 (0.79-2.09)、第4分位群2.27 (1.45-3.55)であった。病型別にみると、ADおよびVaDの両病型においてもCVレベルと認知症発症リスクの間に有意な正の関連を認めた(両傾向性p<0.05)。わが国の地域高齢住民では、家庭血圧の日間変動の増大に伴い、全認知症、AD、およびVaDの発症リスクが有意に上昇した。血圧の日間変動が認知症発症の予測因子なのか、介在因子であるかについては更なる検討が必要である。
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