研究課題
自殺企図患者34名、自傷患者22名、自殺や自傷でなく単なる事故で入院したコントロール患者156名を対象として、まずは精神疾患の合併の有無を調べた。その結果、予想されたことではあったが、自殺企図群34名中29名に精神疾患があり、自傷群22名中22名に精神疾患があり、コントロール群156名中12名に精神疾患があり、この分布には有意差があった。そこで、精神疾患の有無に分けて、まずは精神疾患ありの患者63名の中で自殺企図群29名、自傷群22名、コントロール群12名の平均リチウム濃度を比較したところ、自殺企図群3.8 μg/L、自傷群6.1 μg/L、コントロール群6.2 μg/Lと3群間で有意差があり、自殺企図群がコントロール群や自傷群よりも血中リチウム濃度が低かった。精神疾患なしの患者においては3群間で血中リチウム濃度に有意差はなかった。さらに、精神疾患ありの63名について、リチウム以外にEPA、DHA、アラキドン酸および患者の性や年齢を入れて、コントロール群を参照群として自傷群と自殺企図群をこれらの要因で予測できるかどうかという、多項ロジスティック解析を行ったところ、自殺企図群はコントロール群と比較してリチウムがp=0.066でオッズ比が0.79であった。つまり、リチウム濃度が1単位増えると自殺企図が0.79倍になる(21%減る)ことが有意傾向ではあるが示された。リチウムは自傷とは関係せず、EPA、DHA、アラキドン酸については自傷にも自殺企図にもまったく関係なかった。精神疾患なしの144名について同様の解析を行ったところ、自殺企図とリチウムは関係なかったが、EPAが1単位増えるとコントロール群と比較して自殺企図が0.91倍(9%減る)ことが、有意傾向(p=0.072)をもって示された。
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J Affect Disord.
巻: 241 ページ: 200-205
10.1016/j.jad.2018.08.006