研究課題
アルツハイマー病は社会的にも経済的にも大きな問題であり、実際の在宅介護や施設の現場では、患者の認知機能障害以上にBPSD:認知症の行動・心理症状が大きな負担となっている。本研究では、強い精神症状を呈した新規プレセニリン遺伝子変異(1アミノ酸欠損)を導入したTGマウスを作製・行動解析・免疫組織学的検討を加えることで、BPSDの症状発現に関与する神経伝達物質系や関連蛋白などの同定を試みることを目的としている。我々は家族歴のある精神症状が極めて強い家族性ADにおいて、新規の欠失を持つプレセニリン1遺伝子異常を同定している。同変異を導入したTGマウスを作製することで、行動異常などの表現型を示し、神経病理学的異常を示すTGマウスの作製を目指した。本研究のTGマウス作製については、様々な条件を検討し、山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所遺伝子実験センターに作製を依頼した。昨年度は、CRISPR/CAS9法で、第一回目を作製(インジェクション後、162個の生き残り胚を戻し、帝王切開で22匹を得たが、3匹が生後まもなく死亡)、生存している個体が札幌医大に搬入されたが、遺伝子変異の導入が確認されなかった。第二回目も作製(インジェクションを後、93個の生残り胚を戻し、2匹帝王切開で生まれたが1匹死亡)されたが、変異を含んだ個体を作製できなかった。山形大学とCRISPR/CAS9法に使用されるガイドRNAの再設計を行い、第3回は、卵にハイブリッド系(BDF1)も用いたが、帝王切開して得た25匹中18匹が尾が短く、蘇生できず、死亡。B6の卵を用いた系でも同様で、生きた個体を得ることができなかった。最終的には3年目の終りに、上記のBDF1の卵を用いての生存個体を3体得ることができた。BDF1バックで繁殖を行っており、今後、行動評価や病理評価を行っていく予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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