研究課題/領域番号 |
15K09841
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
安野 史彦 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (60373388)
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研究分担者 |
飯田 秀博 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 非常勤研究員 (30322720)
数井 裕光 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30346217)
梶本 勝文 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (30403067)
森田 奈緒美 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (70380045) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / MRI / PET アミロイド検査 |
研究実績の概要 |
脳梗塞患者における亜急性期の時点での神経機能、PET神経画像の解析 被験者を追加し、ラクナ脳梗塞患者17名で、亜急性期および、発症後1年目において、①認知機能の評価、②PIB-PETイメージングによる脳内局所アミロイド集積の定量、③MRIによる脳容積および拡散テンソル定量の経時的な測定を行った。健常対照被験者13名を対象に、同様の1年間の経時的な検討を行った。 その結果、昨年度までと同様の結果を得た。すなわち、①脳梗塞患者は亜急性期において、全般的な認知機能(MMSE)と記銘力(聴覚性言語記憶課題:AVLT)において、健常者よりも有意に低い傾向があったが、1年間の変化量に有意な差異を認めなかった。②MRIによる脳容積および拡散テンソル画像値において、亜急性期の段階で、脳梗塞患者は有意な萎縮傾向と白質テンソル定量値の異常を示したが、1年間の変化量に有意な差異を認めなかった。③脳アミロイド定量値において、亜急性期において脳梗塞患者は健常対照者と比較して、頭頂葉内側部(楔前部)を中心に有意に高いアミロイドの集積を示したが、1年後、両群の差異は消失した。④ 1年間でのアミロイドの増加は、脳梗塞患者群に比較して、健常被験者群で有意に大きかった。 現状の被験者数で、ラクナ梗塞による発作を経験した脳梗塞患者においては、亜急性期の段階で、認知機能の低下をみとめ、また、MRIによって脳構造的な異常を有するものの、それらは1年間で有意な変化を示さなかった。ラクナ脳梗塞患者において、亜急性期において局所アミロイド集積がみられたが、1年間の経過では、アミロイドの増大はむしろ抑制されていた。脳卒中発作後の、薬物を中心とした治療介入がアミロイド集積を抑制する可能性がある。最終年度にむけて被験者数を追加して、継時的検査の実施を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の主要な目的であった、脳梗塞亜急性期および健常対照被験者における、①認知機能の評価、②PIB-PETイメージングによる脳内局所アミロイド集積の定量、③MRIによる脳容積および拡散テンソル定量の1年間の経時的な変化の測定について、PET撮像装置の故障等による撮像困難が生じたため、被験者数が目標数に達成できなかった。 しかしながら、これまでの結果では、ラクナ脳梗塞患者において、亜急性期の段階で頭頂葉内側を中心とした局所アミロイド集積がみられ、虚血性変化がアルツハイマー型認知症発症する可能性を支持したが、1年間の経過では、アミロイドの増大はむしろ抑制されていることが確認でき、脳卒中発作後の、薬物を中心とした治療介入がアミロイド集積を抑制する可能性が示されている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに行ったラクナ脳梗塞患者17名に加えて、統計的により確かなレベルまで患者を追加して、これまでと同様の①認知機能の評価、②PIB-PETイメージングによる脳内局所アミロイド集積の定量、③MRIによる脳容積および拡散テンソル定量の1年間での継時的な変化を検討中である。最終年度において、1年間の経過において、ラクナ脳梗塞患者では、アミロイドの増大はむしろ抑制されていることを確認し、さらに患者背景を詳細に検討することによって、脳卒中発作後の、薬物を中心とした治療介入がアミロイド集積を抑制する可能性を検証する。そのうえで学術誌に報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度までの脳梗塞患者16名および健常対照被験者12名に加えて、平成29年度にさらに3名の脳梗塞患者および7名の健常被験者で継時的なPET画像による脳内アミロイド集積の定量解析を行い、発表を行う計画であったが、同年度にPET撮像装置の故障等による撮像困難および研究の遅延が生じたため、計画を変更し平成30年度に追加の被験者のPET画像解析と研究発表を行うこととした。
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