研究実績の概要 |
妊婦の睡眠障害は、胎児の発達と共に妊娠後期に主に起きる。妊婦の睡眠中の胎児の動きと母親の覚醒・体動との同期性を検討し、母児の関係性の客観的な指標を作成し、産褥期に非適応状態であるうつ状態の早期発見を可能とする方法を検討する。本研究者は、産褥期の睡眠障害は、産褥期の非適応群に多く、新生児の発達に関係した要因と妊娠期の母親の睡眠障害などの精神生理学的要因に影響されると考えている。 本研究においては、本研究者が開発した胎児と母親の体動が同時に記録できるオリジナル胎動記録装置を用いて、特に母児の睡眠中の体動の同期性を検討し、この指標が、出産後の産褥期の非適応状態を示唆する指標になりうるか検討を行う。 本年度は、妊娠後期から産褥期までに、母児の体動記録を行うこと、さらに睡眠・授乳日誌、うつ状態、不安状態などの各種心理検査も行い、精神生理学的に総合的に検討する実験を計画し、この計画は、労働科学研究所の倫理審査委員会に承認された。胎動記録装置は、本来、胎児のwell-beingを見るために開発された装置である。2dhであり、1chは母親の腹部より胎動を記録し、もう1chは、母親の大腿部から母親の体動を記録する。胎児のwell-beingを見るためには、真の胎動信号を抽出することが必要で、母体動は、アーチファクトとして除去される解析ソフトを完成させた。この解析ソフトの妥当性を検討し、論文として発表した(Nishihara, et al, Plos One, 2015)。一方、このソフトで除外された母親の体動は、母親の睡眠中におきる、胎動に誘発される、Micro-arousalとの関係が予想され(Nishihara, et al, Early Human Dev 84, 2008)、ひとつの母親の睡眠障害の指標となりうる。そこで、母児の体動の信号を同定できているので、その同期性の検討をソフト上で行い、同時に起こった母児体動頻度を算出し、現在、検討中である。
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