研究課題
妊婦の睡眠障害は、胎児の発達と共に妊娠後期に主に起きる。妊婦の睡眠中の胎児の動きと母親の覚醒・体動との同期性を検討し、母児の関係性の客観的な指標を作成し、産褥期に非適応状態であるうつ状態の早期発見を可能とする方法を検討する。本研究者は、産褥期の睡眠障害は、産褥期の非適応群に多く、新生児の発達に関係した要因と妊娠期の母親の睡眠障害などの精神生理学的要因に影響されると考えている。本研究においては、本研究者が開発した胎児と母親の体動が同時に記録できるオリジナル胎動記録装置を用いて、特に母児の睡眠中の体動の同期性を検討し、この指標が、出産後の産褥期の非適応状態を示唆する指標になりうるか検討を行う。本年度は、昨年度の結果をもとに、オリジナル胎動記録装置が、果たして、妊婦の睡眠障害の指標を測定する装置となりうるかを詳細に検討した。この装置は、母親の体動と胎児の胎動を同時記録しているので、母親の体動から、就床時間、中途の覚醒時間が算出できる。そして、胎動と母親の体動の同期性の回数から、母親のMicro-arousal(微小覚醒)が推測できると考え、3つのパラメータを検討した。12名の妊婦の妊娠24週から36週から得たデータで検討した結果、平均就床時間は、384分から400分、平均中途の覚醒時間は、17分から20分、母児体動同期回数は58回から86回であり、われわれが今まで報告してきた睡眠ポリグラフィの結果と相応するものであった。この内容は、第23回ヨーロッパ睡眠学会に発表した。現在、例数を追加中である。
2: おおむね順調に進展している
この胎動記録装置は、妊婦が被験者であると共に自らセンサーを腹部に付けたり、レコーダの電源スイッチを入れるなど実験者としての側面をもつ。今年度、今まで予期していなかったレコーダのトラブルにみまわれた。妊婦さんにより、勝手に電源スイッチを止められたケースでは、データが保存できないなど、レコーダのファームに問題があり、改良を行い、遅れが生じた。これからもいろいろの臨床現場に対応できるように機器を改善をすべきであると思えた。それ以外は、進行中である。
当研究所で実験に参加してくださる妊婦さんに限りがあるので、エフマム研究会(http://e-mother.co-site.jp/)の連携研究者をとおして、例数を追加しようと考えている。
解析ソフトの改良予算を計上していたが、使用の仕方で、睡眠障害パラメータを算出できるので、改良費を、データ収集の費用に計上予定である。
昨年、オークランド大学の周産期研究グループが胎動記録に興味をもち、当研究所との共同研究が成り立った。昨年残した費用を共同研究先の旅費に計上の予定である。最終年度であるので、論文にまとめ、多くの研究者がアクセスできるようにオープンジャーナルに投稿する予定で、その予算を計上している。
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