研究実績の概要 |
妊婦の睡眠障害は、胎児の発達と共に妊娠後期に主に起きる。妊婦の睡眠中の胎児の動きと母親の覚醒・体動との同期性を検討し、母児の関係性の客観的な指標を作成し、産褥期に非適応状態であるうつ状態の早期発見を可能とする方法を検討する。本研究においては、本研究者が開発した胎児と母親の体動が同時に記録できるオリジナル胎動記録装置を用いて、特に母児の睡眠中の体動の同期性を検討し、この指標が、出産後の産褥期の非適応状態を示唆する指標になりうるか検討を行う。 昨年度は、オリジナル胎動記録装置が、妊婦の睡眠障害の指標を測定する装置となりうるとし、今年は、さらに例数を増やした。また母親の睡眠障害のパラメータだけでなく、特に母親の睡眠に影響を与える胎児の動きとほとんど影響を与えない胎動との違いも解析した。 18名の妊婦の妊娠24, 28, 32, 36週に夜間睡眠中の母児の体動を4回記録した。母親の平均就床時間は、392分から421分、平均中途覚醒時間は、13分から15分、母児体動同期回数(micro-arousal微小覚醒と考えられる)は62回から79回であった。これらのパラメータは、本研究者の以前のポリグラムの結果と相応するものであった。 母児体動の同期した胎動信号と母親の睡眠に影響のなかった胎動信号の平均持続時間と平均振幅を比較検討した結果、母児体動同期の胎動信号の平均持続時間は、長く、平均振幅は、大きい傾向にあった。これら2種類の胎動信号の生理学的意義についてはさらに研究を深める必要がある。この内容は、2017年、オーストラリア睡眠学会に発表した。
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