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2016 年度 実施状況報告書

統合失調症の神経発達障害に関わるmiRNAの分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K09849
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

豊島 学  国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90582750)

研究分担者 吉川 武男  国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30249958)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード統合失調症 / 22q11.2欠失 / iPS細胞 / DGCR8 / 神経発達 / miRNA
研究実績の概要

神経系においてmiRNA は、神経発達やシナプス機能に重要な役目を果たしている。このmiRNA の生成に関与するDGCR8 遺伝子の発現低下は、マウスにおいては統合失調症のモデルの1 つとされている。また、ヒトにおいてはDGCR8 遺伝子を含む領域(22番染色体長腕の11.2領域)の欠失によって、統合失調症の発症リスクの増大が起こることが知られている。上記の背景から我々は、「miRNA の生成経路の異常による特定のmiRNA の発現低下が、神経系細胞の分化・発達に影響を及ぼし、統合失調症の発症リスクを増大させる一因」と考えた。この仮説を検討するため、本研究では、22q11.2領域の欠失を持った統合失調症患者由来のiPS細胞や、DGCR8 遺伝子を改変したiPS 細胞を用いて神経幹細胞や各種神経細胞への分化誘導を行い、miRNAの発現変化、神経分化や神経発達の異常を解析することで、miRNAの発現低下がヒトの神経系細胞の分化・発達にどのような影響を及ぼすのか明らかにすることを目的としている。本年度の研究では、miR-17 familyの発現低下と神経分化や神経発達の異常の関連を明らかにするため、miR-17 familyのmiRNAがターゲットする遺伝子に注目して解析を行った。その結果、疾患患者由来の神経幹細胞では、miR-19a/bがターゲットとするPTENの発現量が増加していた。PTENは、神経幹細胞の自己増殖や分化の運命決定に関与することが知られていることから、特定のmiRNAの発現低下による神経分化や神経発達の異常には、PTENの発現変化が関わっていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で用いた22q11.2領域の欠失を持った統合失調症患者由来のiPS細胞では、特定のmiRNAの発現低下がPTENの発現上昇を引き起こし、神経分化・神経発達の異常に繋がることが分かり、miRNAの発現低下が神経系細胞の分化・発達に及ぼす影響の一端を明らかにすることが出来た。DGCR8 遺伝子欠損iPS 細胞については、現在CRISPR/Cas9系を用いて作製を進めている。

今後の研究の推進方策

迅速にDGCR8 遺伝子欠損iPS 細胞を作製し、神経幹細胞、神経細胞においてmiRNAの発現低下が神経分化・神経発達に及ぼす影響を解析する。

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究は、主にmiRNAとそのターゲットとなる遺伝子の解析を行い、DGCR8 遺伝子欠損iPS 細胞の作製については、gRNAの設計に留まったため、作製に関する研究費は次年度に持ち越した。

次年度使用額の使用計画

DGCR8 遺伝子欠損iPS 細胞の作製に用いる遺伝子導入試薬、細胞培養試薬及び消耗品の購入に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Analysis of induced pluripotent stem cells carrying 22q11.2 deletion2016

    • 著者名/発表者名
      Toyoshima M, Akamatsu W, Okada Y, Ohnishi T, Balan S, Hisano Y, Iwayama Y, Toyota T, Matsumoto T, Itasaka N, Sugiyama S, Tanaka M, Yano M, Dean B, Okano H, Yoshikawa T
    • 雑誌名

      Translational Psychiatry

      巻: 6 ページ: e934

    • DOI

      10.1038/tp.2016.206.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 患者由来のiPS細胞を用いた神経発達障害に関わるmiRNAの分子病態の解明2017

    • 著者名/発表者名
      豊島学, 赤松和土, 岡田洋平, 大西哲生, 岡野栄之, 吉川武男
    • 学会等名
      第12回日本統合失調症学会
    • 発表場所
      米子コンベンションセンターBIG SHIP (鳥取県米子市)
    • 年月日
      2017-03-23
  • [学会発表] Schizophrenia patient-derived hiPSCells exhibit changes in Neurogenic and Gliogenic Competences2016

    • 著者名/発表者名
      Manabu Toyoshima, Wado Akamatsu, Yohei Okada, Hideyuki Okano and Takeo Yoshikawa
    • 学会等名
      CINP 2016
    • 発表場所
      韓国、ソウル
    • 年月日
      2016-07-03
    • 国際学会
  • [学会発表] 統合失調症患者由来神経幹細胞における分化異常の分子病態2016

    • 著者名/発表者名
      豊島学, 赤松和土, 岡田洋平, 大西哲生, 田中元雅, 岡野栄之, 吉川武男
    • 学会等名
      第46回日本神経精神薬理学会年会
    • 発表場所
      韓国、ソウル
    • 年月日
      2016-07-02
    • 招待講演
  • [図書] 遺伝子発現からみたうつ病の神経科学2016

    • 著者名/発表者名
      前川素子、豊島学、吉川武男
    • 総ページ数
      232 (32-37)
    • 出版者
      最新医学社
  • [図書] 統合失調症の神経発達障害にかかわるmiRNAの分子基盤2016

    • 著者名/発表者名
      豊島学、吉川武男
    • 総ページ数
      65 (8-14)
    • 出版者
      先端医学社
  • [備考] iPS細胞からみえる統合失調症の特徴

    • URL

      http://www.riken.jp/pr/press/2016/20161102_1/digest/

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公開日: 2018-01-16  

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