本研究では、ベースライン調査時点に抑うつ症状を呈していなかった家族介護者のうち、「追跡調査時点に抑うつ症状を呈するようになった介護者」を悪化群とし、「追跡調査時点にも抑うつ症状を呈していなかった介護者」を維持群とした。まず、前年度行った単変量解析において、両群間に有意差が認められた、2つの変数である家族介護者の主観的健康状態と要介護者の性別との相関を検討したところ、有意な相関は認められなかった。 次に、家族介護者の主観的健康状態と要介護者の性別を独立変数として、悪化か維持の転帰を従属変数として、ロジスティック回帰分析を行ったところ、家族介護者の主観的健康状態が有意な関連要因であることが明らかになった。抑うつ症状の発症の関連要因としては、ベースライン調査時点における家族介護者の主観的健康状態が、介護者の抑うつ症状発症の関連要因と考えられた。また、「ベースライン調査時に抑うつ症状を呈していた介護者のうち、追跡調査時に抑うつ症状を呈さなくなった家族介護者」(軽快群とする)と「ベースライン調査時に抑うつ症状を呈していた介護者のうち、追跡調査時にも抑うつ症状を呈していた家族介護者」(抑うつ維持群)の特性の比較を行うことで抑うつが維持されてしまう(軽快しない)要因についての検討を行った。両群間における要介護者の認知症の重症度、日常生活自立度、要介護度について、有意差は認められなかった。しかし、抑うつ維持群の家族介護者における嫁の割合は、軽快群に比して、有意に高く、家族介護者に対して知人・友人からの支援がない者の割合が高い傾向が認められた。
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