平成30年度は、平成29年度までに得られたデータにおいてrecursive partition analysisを含めて更なる解析を行った。 大学入学時に抑うつ症状の評価として施行したPatient Health Questionnaire(PHQ-9)および人格特性の評価として施行したTemperament and Character Inventory(TCI)を、3年後の大学4年時にPHQ-9を完全に回答していた2194例について検討を行った。女性は36.1%、入学時の平均年齢は19.2歳であった。入学時のPHQ-9でのうつ病エピソードは2.0%、自殺関連念慮は5.1%であった。うつ病エピソードのある群はない群と比較してTCIでの性格傾向として自己志向が有意に低かった。 多重ロジスティック回帰分析では、大学4年時のPHQ-9でのうつ病エピソードは入学時のPHQ-9でのうつ病エピソードと自殺関連念慮が予測因子となった。 Recursive partition analysisでは、大学入学時のPHQ-9で15以上であると大学4年時のうつ病エピソードの危険性は38.5%と高くなった。一方、大学入学時のPHQ-9が5以下でTCIでの自己志向が51以上であると大学4年時のうつ病エピソードは0%であった。大学入学時のPHQ-9で5以上、自殺関連念慮が1以上であると大学4年時の自殺関係念慮は31.7%であり、大学入学時のPHQ-9が2より少ないと大学4年時の自殺関連念慮は1.2%と少なかった。 これらの結果から、入学時のうつ病エピソードと自殺関連念慮が、人格特性では低い自己志向が、4年時のうつ病エピソードと自殺関連念慮を予測した。逆に、高い自己志向はうつ病エピソードの出現に保護的に作用することが考えられた。
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