研究課題/領域番号 |
15K09858
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
管 心 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20553704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 認知機能 / バイオマーカー / First Episode Psychosis / At Risk Mental State |
研究実績の概要 |
東京大学医学部附属病院精神神経科にて精神病ハイリスク患者(At Risk Mental State)および初発統合失調症患者(First Episode Psychosis)を対象とした専門外来において、マルチモダリティMRI(f-MRI、1H-MRS、VBM、volumetric MRI、DTI)、神経心理学的検査(統合失調症認知機能簡易評価尺度)、生体内物質、臨床症状(PANSS、m-GAF)のデータを縦断的に収集している。 今回我々は、精神病を顕在発症していないARMS 34名およびFEP 29名に対して、追跡開始時の神経心理学的検査から得られた認知機能と、追跡開始一年後の臨床症状(mGAF)の相関を検討した。その結果、ARMS群では追跡開始時の注意機能・情報処理速度が追跡開始一年後のmGAFと相関を示し、またFEP群では追跡開始時の実行機能が追跡開始後一年間のmGAFと相関した。 以上の結果より、精神病発症周辺期の患者では統合失調症認知機能簡易評価尺度から得られる注意機能・情報処理速度・実行機能が、治療開始後の全般的な社会機能や症状などの予測因子、すなわち予後を予測するためのバイオマーカーとなる可能性が示された。特に統合失調症認知機能簡易評価尺度は、短時間で実行可能な簡易な統合失調症認知機能検査であり日常の臨床場面での利用が容易であるため、精神科の実臨床での応用が期待される。 この結果はPsychiatry and Clinical Neurosciences誌にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではAt Risk Mental State群(ARMS)を60名リクルートする予定であるが、現在47名に達している。追跡開始一年後も約70%の被験者から追跡開始時と同じマルチモダリティMRI(f-MRI、1H-MRS、VBM、volumetric MRI、DTI)、神経心理学的検査(BACS-J)、生体内物質、臨床症状(PANSS、m-GAF)のデータを取得できている。 ARMS群のうちFirst Episode Psychosis(FEP)を顕在発症したものは11%にとどまっているため、ARMSから顕在発症した群とそうでない群とを当初の予定にあったように比較検討するには例数が不足しているが、一方で既にFEP群36名も同様にリクルートしており、ARMS群とFEP群の比較は行えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き東京大学医学部附属病院精神神経科にて精神病ハイリスク患者(ARMS)および初発統合失調症患者(FEP)を対象とした専門外来を通じて、新規研究参加者のリクルートと追跡調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京大学医学部附属病院臨床研究棟の竣工後に、以前の研究室より移転してから納画像解析用のパソコンを購入して解析開始予定としていた。しかし東日本大震災の被災地復興および東京オリンピックの準備のために建築費の高騰や人手不足により竣工と移転が2016年夏まで遅れた。その結果として、パソコンの購入と解析開始が2016年度の半ばまで遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度後半には解析開始しており、すでに一部は論文投稿に至っている。2017年度中にデータの追加蓄積と解析・論文化・学会発表を行う予定である。
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