研究課題/領域番号 |
15K09863
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
城山 隆 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00252354)
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研究分担者 |
前田 正幸 三重大学, 医学系研究科, 教授 (70219278)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 緊張病 / 前頭葉 / 気分障害 |
研究実績の概要 |
双極性障害の緊張病症状に関連することから、双極性障害の精神病症状の有無に伴う脳白質微細構造に関して、H24-26年度の成果報告書よりもさらに詳細に研究を進め、結果の一部は第38回日本生物学的精神医学会において報告した。さらに2群間の年齢・性別を厳密に一致させると、サンプル数は減少したが、左の後部頭頂葉から後頭葉白質にFA値の精神病性<非精神病性の差異がみられた。AD値のaging slopeが精神病性>非精神病性である領域もみられた。 緊張病の有病率は3.4%~10.3%と診断基準によるばらつきがみられ(Sarkarら2016)、DSM-5で拡大した緊張病概念に関しても気分障害における昏迷の位置づけについて本邦でも議論がある(安木ら、宋、ともに2016)。少ないサンプル数による解析では、サンプルの均質性を高めることが検出力と解析の意義を高めると考え、本研究では被験者に関して気分障害を双極性障害に限定し、加齢変化を除くため50代以下に限定し、うつ病性昏迷は除くという厳密な基準を設定した。しかしその結果として緊張病群のサンプルの集積が遅れているため、1例対多数例の2群比較の可能性を検討した。1例対多数例の2群比較に関して統計的な妥当性が従来から論議されているがノンパラメトリック検定であるTBSSにおいて、p=0.05以下を求めるには対照群は最低20例が必要とされる。今回は緊張病症状を伴う双極性障害1例と健常者22例の2群で白質骨格の微細構造について、年齢・性別を共変量としてFA,MD,AD,RDを比較したところ、補足運動野の腹側の皮質脊髄路に、FA値の緊張病例>健常群を示す領域がみられた。緊張病の運動症状の器質的背景として従来から報告される領域であり、1対多数例の2群比較であっても、典型例であれば、異常所見を抽出する可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
サンプルの均質性を確保するために被験者の登録基準を厳密にしていることと、登録基準を満たす被験者でも登録の拒否があるため、被験者の集積が遅れている。緊張病群が十分にサンプル数が集積されない場合、統計的な手法として典型的な緊張病1例対非緊張病多数例の2群間の比較が可能であるのか、可能であるとすれば留意点と限界は何か、について方法論的な観点から、先行研究をおこなっている施設の研究者らと情報交換を重ねており、進捗状況は当初の計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
気分障害で緊張病症状を呈する被験者の登録が進まない状況が続くが、統計解析に必要なサンプル数を確保するために登録基準を緩めてサンプルの均質性が損なわれることはサンプル数の少ない研究では不適切である。厳密な基準を満たす典型的な緊張病症状を伴う双極性障害1例と、年齢・性別・利き手を一致させた、緊張病症状を伴わない双極性障害患者との1例対多数の2群比較をおこなうことを念頭におく。今年度の試行では健常群は年齢・性別にばらつきがあることから、今後、年齢・性別・利き手を一致させた対照群との比較が必要である。少ないサンプルの群間比較ではサンプリングバイアスが課題となるため、対照群は年齢・性別・利き手を一致させた緊張病症状を伴わない双極性障害として最低20例を集積する。緊張病症状を伴わない双極性障害被験者は精神病症状を伴わないことを条件とする。TBSS、ROI(H28年度の試行で緊張病例と健常群に差の見られた皮質脊髄路領域など)、SPM、fiber tractgraphy を用いて統計解析に関しては慎重におこなう。緊張病症状の有無による白質微細構造の差異の結果を、H24-26年度の研究で得られた双極性障害の精神病症状の有無による白質構造の差異の結果とも比較する。また、VBMにより全脳で容積の有意差のある領域を検出するために同様の解析をおこなう。 健常群において年齢・性別・利き手をそろえて集積するのは長期の時間を要することが予想されるため、健常群との比較は被験者の集積の進捗によっては次の解析課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究目的の基準を満たす被験者数の少ないことから、研究計画の再検討を要した。本研究では「気分障害で緊張病症状を呈する被験者」を、気分障害の中でも単極性うつ病は除外して双極性障害に限定し、脳構造の加齢変化を除くため50代以下に限定し、緊張病性昏迷と混同されやすいうつ病性昏迷は除いている。サンプルの均質性を確保するために被験者の登録基準を厳密にしているため、被験者の集積が遅れている。緊張病症状の有無に伴う器質的背景の差異を探る方法として、緊張病群が十分にサンプル数が集積されない場合、統計的な手法として典型的な緊張病1例対非緊張病多数例の2群間の比較が可能であるのか、可能であるとすれば留意点と限界は何か、について方法論的な観点から、先行研究をおこなっている施設の研究者らと情報交換を重ねていることから、方法論の再構築に次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
被験者への謝金、先行研究をおこなっている施設の研究者らへの情報収集の旅費、及び参考図書、記憶媒体の購入目的で使用する。
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