研究実績の概要 |
被験者の登録基準を厳密にしたこと、登録基準を満たす被験者でも登録の拒否があったこと、被験者の脳の形状が顕著に他の被験者と異なるケースも脳の標準化の過程に影響を及ぼすため除外したことなどから、研究期間内には一般的な群間比較統計解析が可能なサンプル数の確保ができなかったため、下記の方法で解析を試みた。①緊張病症状を伴う双極性障害2例、近縁の疾患として緊張病症状を伴う統合失調感情障害1例、近縁の症候を呈するものとしてうつ病性昏迷を呈した双極性障害1例を対象に、双極性障害(精神病症状を伴うものと伴わないものが混在)20例を対照群としてTBSSを用いて1例対多数例の解析を行い、緊張病例では小脳、島、前頭前野眼窩部などの白質神経束に白質微細構造の変化を示唆する所見を得た。②上記の被験者でSPM12を用いた1対多数例の解析をおこない、容積変化を呈した脳領域はみられなかった。③上述の被験者に共通する白質骨格をTBSSの前処理の方法で作成し、そこに投影された被験者個々のFA,MD,AD,RD値を前頭前野眼窩部、前視床放線、脳梁(膝部、体部、膨大部)、帯状束、鈎状束、上縦束、下縦束、下前頭後頭、運動野、補足運動野、前運動野、皮質脊髄路をROIとして抽出して緊張病例と緊張病を伴わない双極性障害(精神病症状を伴うものと伴わないものが混在)20例と比較したところ、緊張病例では鈎状束、補足運動野、前運動野などに白質微細構造の変化を示唆する所見を得た。以上の所見を前年度までの緊張病例と健常群との1対多数例の比較所見と合わせて考えると、緊張病症状に関して情動と運動症状の関連の背景に白質微細構造の変化があることを示唆していると考えられた。
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